■あなた しってますか?
ドラゴンの角(南側)にいる商人のおっさんについて。
■元祖
皆さんドラクエをプレイしていて、
*「あなた しってますか?
といった感じにいきなり意味不明な問いかけをされた経験が一度や二度や三度や四度あるでしょう。僕はこの手の突然質問してくるタイプ(以下、便宜的に“突質型”とする)のモブキャラのファンで、彼らはドラクエの名物の一つと言っても良い存在だと思っています。そして知っている人は知っていると思いますが、この突質型の祖となる人物こそ何を隠そうくだんのおっさんなのです(僕の知る限り)。
■台詞
おっさんは言います。
*「たびのひと!しってますか?
それに対する我々の答えは、当然ながら“はい”と“いいえ”しかありません。それぞれの選択肢を受けてのおっさん台詞は次のようなものです。
“はい”
*「………。
まだ なにも はなしてないのに。
ま、いいか。
“いいえ”
*「ここが ドラゴンのつの
と よばれる ゆうめいな
ふたごのとうです。
じつに素晴らしいです。初期のドラクエでたまに見られる希少文字であるところの読点が目を引くのはもちろんですが、“はい”に対する返答内容が興味深く思えます。なぜなら、自分が如何に唐突で意味不明な台詞を吐いているかを、おっさん自身理解していることが分かるからです。そこに元祖っぽさが滲み出ていやしないでしょうか。
■正体
気になるのは、このおっさんがいったいどういう人物なのかという点だと思います。ドラゴンの角とは運河を挟んでそびえている二基の塔の名前ですが、北側はともかくおっさんがいる南側にはマンドリルとかメドーサボールとかがうろついているだけで何もないのです。そんな塔の中で何をやっているのか、さっぱり分かりません。
しかし、リメイク版2で、おっさんの台詞に次のようなテキストが追加されました。
*「なんでも 昔は
むこう岸の塔と つり橋で
むすばれていたとか…。
*「しかし 今は このありさま。
どうやったら むこう岸まで
いけるんでしょうね……。
これを聞いて僕は、おっさんは旅の商人で、行商の途中で塔に来たものの橋がなくて立ち往生しているのだろうかと考えました。ところが事実は違っており、その答えは予想だにしないところから齎されることに。なんとDS版4の移民としてこのおっさんがゲスト出演していて、そこで自身について次のように語っていたのです。
*「わたし 昔は ドラゴンの角
と呼ばれる ふたごの塔で
ガイドの仕事を していたんですよ。
*「でも 場所がら おとずれる人も
少なくなってきて 転職したんです。
ま それは さておき……
この出来事は、僕にとってかなり衝撃的なものでした。なんかあのおっさんとそっくりの台詞をしゃべっているなと思ったら本人でびっくり、オマケにその正体まで明らかになってこれまたびっくり、といった感じです。
しかし、まさかガイドだったとは……そう言えば6のランドもそんな仕事をしていましたが、このおっさんもそうだとは頭をかすめもしませんでした。言われてみればなるほどと頷けるのですが、そもそもそんな仕事に需要があるのかという。いや、実際なかったみたいですが。
それはそうと、ガイドということは塔の中で働いていることになりますから、やはりそこで寝泊りしているのでしょうか。台詞を見るに南側の塔の向こう岸にあるルプガナからは通ってなさそうだし、かといって陸続きのムーンペタは遠すぎるように思えます。
■移民
DS版4の移民としてゲスト出演しているのは、このおっさんだけではありません。ロトシリーズから数々の愛すべきキャラクターが登場しています。ガライやカンダタやソクラス、しゃべる馬のエドやタシスンの飼っていた犬、ドン・モハメやナナやロッコ。固有の名前がつけられていたり、それぞれの作品の中で重要な役割を果たしたりした、そうそうたる顔ぶれです。
ところが、おっさんはどうでしょうか。おっさんは、只の名もないおっさんです。上記のメンバーに加えられると、明らかに一人だけ浮いています。そんな彼が、なぜゲスト移民の一人に選ばれたのでしょう。
これは想像なのですが、このおっさんは堀井さんお気に入りのキャラクターなのではないでしょうか。おそらく堀井さんは自身が生み出した突質型のキャラが好きで、その元祖であるこのおっさんは、堀井さんにとって他のゲストメンバーに劣らない存在なのではと思うのです。リメイク版1などには突質型キャラが新たに追加されているし、数多存在するロトシリーズの登場人物の中から彼が選ばれたわけですから、どうもそのような気がします。
■おわりに
“また別の機会に”の機会が一千と七日後のことだった、なんて良くある話ですよね。