■たいまつ
【たいまつ】(以下、松明)とはドラクエ1に登場するアイテムである。5にもあるけど今回は触れない。
■ダンジョンと松明
ドラクエ1のダンジョンは暗闇の世界。主人公が立っている場所だけが表示され、周りに何があるのかを目視できない。この仕様はダンジョン本来の広さや複雑さを何倍にも高める素晴らしいもので、その結果1のダンジョンは他のタイトルに見劣りしない難易度になっている。ような気がする。
何もない状態で下手にダンジョンを進もうとすると、すぐに自分の居場所が把握できなくなり簡単に出口を見失ってしまう。いったい何処を歩いているのかも分からず、何度も同じ場所をさまよっているような錯覚に陥り、じつは錯覚でも何でもなく本当に同じ場所をぐるぐる回っているだけだった、ということも珍しくない。ただでさえ孤独な一人旅なのに、本当に世界に取り残されてしまったような恐ろしい感覚を味わうことになる。BGMも怖いし。
そんな絶望に救いの手を差し伸べてくれるのが、我らがヒーロー松明だ。松明を使うと暖かな光が主人公の周り一マス分を照らしだしてくれるのだが、このたった一マスがあるのとないのとでは大違い。マッピングはずっと簡単になり、ダンジョンを出るまで燃え尽きることもなく主人公を目的の場所まで導いてくれる。ありがとう松明。
■勇者と松明
今まで全然気にしてなかったけど、松明を持っていると当然片方の手がふさがってしまう。ということは、武器と盾を装備している場合もう一本腕が必要ということだ。加えて呪文も使おうと思ったら四本目の腕まで必要になってくる。どこの天津飯だ。
ダンジョンが暗いってだけで1の勇者は凄く大変だ。知らないところで色々と工夫して戦っているに違いない。8の主人公たちは戦闘に入ると当たり前のように松明持ってないけど。
■ドラキーと松明
僕が初めてやった1はSFC版のものだった。FC版も家にはあったんだけど、何故かやったことがなかった。
その初めての1で、レベル1のときにドラキーと遭遇し、あっさりやられてしまったことがある。その話を知人にすると同じ状況に陥ったことがあると言うのだ。
さてはコイツもやられやがったなと思って聞いていると、さにあらず。なんと持っていた松明(最初の宝箱に入ってたの)を投げつけて倒したと言うではないか。え? 松明って戦闘中に使えるの? それが、その時の僕の感想だった。
しかし今思い返すに、あれは人生における一つの分岐点だった気がする。とくに抵抗もなくドラキーにやられたあの時の僕は、言ってみれば生きることを簡単に諦めたということだ。翻って知人は、戦闘中に松明を使うという僕には思いもよらない咄嗟の機転により見事窮地を切り抜け、そして生き残ったのである。ここに人生の荒波を越えてゆけるか否かの境目があったのではないか。
つまり、今にも人生を投げ出しそうな僕の現状はあの時すでに示唆されていたというわけだ。こいつは気づかなかったぜ。そして今更気づいても、もう遅いぜ。
■おわりに
もちろんドラキーにやられてしまった人全員に当てはまるなんて言うつもりは微塵もないので、誤解なきよう。因みにFC版では松明を戦闘中に使用することはできない。