■ダンジョンで暮らす
迷路のように複雑な構造。内部に巣食った強力なモンスターたち。多彩な仕掛けやトラップ。冒険者に不安を抱かせ、恐怖を煽り、絶望の淵に突き落とす。
ドラゴンクエストの世界には、そんなダンジョンが数多く存在している。ロンダルキアへの洞窟はあまりに有名。その他にも、竜王の城、大灯台、ピラミッド、エスターク神殿、デモンズタワー、月鏡の塔、風の迷宮、剣士像の洞窟など、枚挙にいとまない。
ところが、その探索中に思いがけず人と出くわしビックリしたという経験はないだろうか。そう、何を血迷ったのか、わざわざ危険なダンジョンで暮らしている人がドラクエには結構いるのだ。というわけで、このページではそんな人たちを紹介しようと思う。ただし、全てを網羅するのは大変なので、今回は2に限らせてもらうことにする。
■勇者の泉の洞窟
2で最初に訪れるダンジョン、勇者の泉の洞窟。旅に出たばかりの勇者を恐怖に誘うこの場所に、二人の人物が暮らしている。一人は入口から最深部までの丁度中間あたりの小部屋にいる男。リメイク版では二階に個室を作って、ベッドとテーブルまで持ち込んでいる。
*「わかものよ、ゆうしゃのいずみで
からだを きよめて もらったか?
という彼の問いかけに、はいと答えたときの、
*「それは よかった!
の一言で、妙に勇気づけられた思い出がある。ローレシアに伝わる慣わしを旅立つ若者に行わせるのが、彼の役目なのだろう。しかし、FC版で問題なのはもう一人の住人である身体を清めてくれるじいさん。
*「サマルトリアのおうじを
おさがしか?
という問い掛けに、いいえと嘘を吐かないと何故か身体を清めてくれないのだ。そのまま進んだ冒険者も多いかもしれない。因みにSFC版ではしっかり修正されている。
■ムーンブルクの城
ハーゴンの軍隊によって壊滅し、モンスター蠢くダンジョンと化してしまったムーンブルクの城。その地下に一人の兵士がいる。彼は、ムーンブルクの王女がハーゴンの呪いで姿を変えられ何処かの町にいることと、その呪いを解くにはラーのかがみが必要であることを教えてくれる。そして、SFC版ではそれを伝えた後で力尽きてしまう。
兵士は瀕死の状態で何とか地下へと身を隠し、誰かが自分のもとへ訪れるのをずっと待っていたのだろう。そんな人が来る保証も確信も全くなかったに違いない。しかし、王女の行方を知っているのは自分だけであり、自らの手に国の命運が握られているというその責任感だけで、何とか気を保っていたのではないだろうか。
ローレシアとサマルトリアの両王子に全てを託し、間もなく息絶えた兵士。彼は最期の使命を果たし、安らかに命を終えたのだろうか。それとも、守るべき人たちを守れなかったという未練を残していったのだろうか。前者であることを祈るばかりだ。
■大灯台
何か他の人のことなんて、どうでもよくなってきた。だが、始めたからには書かねばなるまい。たとえ、誰一人望んでいないとしても。次は大灯台の最上階に住む兵士だ。彼から聞ける話は、以下のような内容である。
*「わたしは ずっと まえから
ここで ハーゴンの しんでんを
みはってきた。
*「たいりくの まんなか
そらに そびえる だいちが
ハーゴンのいる ロンダルキアだ。
おそらく誰かに命じられた任務なのだろうけど、化け物だらけの塔でよく生きていられるものだ。まあそれはいいとしても、一つ腑に落ちないことがある。ロンダルキアは万年雪に覆われた標高の高い大地。大灯台からは、かなりの距離もある。そんな場所の一地点に建つ神殿を、どうやって見張っているのか。
……謎だ。
■海底の洞窟
大灯台の兵士よりもっと謎なのが、海に囲まれた海底の洞窟に住む兵士だ。まず、どうやって中に潜り込んだのかが分からない。オマケに二人いる。溶岩が至る所に流れているこんな洞窟に何の魅力があるのだろうか。もしかすると、この洞窟にはハーゴン率いる邪教の礼拝堂が存在するので、その監視を命令されて仕方なく住んでいるのかもしれない。そうだとすると大灯台の兵士と同じである。過酷な任務を言いつける奴がいたもんだ。
ところで、彼らはどうやって生活しているのだろうか。燃料は木製のパペットマン(5だけど四コマにこんなネタあったな)。食料は豚に似たゴールドオークあたりか。あるいは悪魔の目玉もゲソみたいで美味しいのかもしれない。絶対食べたくないけど。
■ロンダルキアへの洞窟
最後に、よりによってあのロンダルキアへの洞窟にいる商人のおっさんを紹介しよう。彼の存在をエンディングで初めて知った冒険者も多いのではないだろうか。因みに、リメイク版にのみ登場する人物である。
場所は最下層。腐った死体たちが徘徊し命の紋章が転がっている、あのフロアだ。しかし、普通に探していては見つからない。三つ並んだ墓のうち右にある崩れた墓を調べると、突然現れるのだ。知らないと、かなり驚く(というかエンディングでおっさんが現れるシーンは、かるくホラーだ)。
何故そんな所にいるのかは、おっさん自身が話してくれた。
*「わっ! びっくりした!
*「ちょっと おどかさないで
くださいよ。ハーゴンに
見つかるじゃないですかっ。
*「もう少しで 邪神の いけにえに
されそうなところを やっと
逃げて来たんですから……。
*「あなたも ハーゴンの神殿には
絶対に 近づかないほうが
いいですよ。では 失礼…。
生贄っていうのは若い娘が相場である気がするのだが、まぁ邪神の趣味をとやかく言うのはよそう。とにかく、おっさんは上記のように言って何故か隣の墓へと移動し、そして隠れる。どうやら住んでいるわけではないようだが、洞窟から出る気もないようだ。
ハーゴンとシドーを倒した後で、ハーゴンの脅威がなくなったことを知らせるために再び彼のもとを訪ねてみた。
*「わっ! びっくりした!
*「ちょっと おどかさないで
くださいよ。ハーゴンに
見つかるじゃないですかっ。
*「…えっ? ハ ハーゴンをたおした?
どひゃー!
*「あの ハーゴンを たおすとは
とんでもない おかただ!
*「どうも ありがとうございました!
ハーゴンが倒されたと知って、おっさんはもう墓には隠れなかった。が、その場を動くこともなかった。そこで一度フロアを切り替えてから戻ってみると、いなくなっている。家に帰ったのかなと墓を調べてみると、なんとまた隠れていた。そんなに墓の中が気に入ったのだろうか……。
■おわりに
2には他にもダンジョンで暮らす人たちが何人かいる。風の塔の兵士、満月の塔の老人、そしてドラゴンの角(南側)で暮らす商人だ。ドラゴンの角の商人については、また別の機会に書かせてもらおうと思う。