■復活の呪文
【復活の呪文】とは、FC版２でゲームを再開するために必要なパスワードのこと。
ゲームをやめるときに王さまやじいさんに復活の呪文を聞いて、それをチラシの裏なんかに鉛筆で書き写すわけだけど、そこにはミスを誘発するためのワナが幾つか仕掛けられている。それゆえに、復活の呪文は悪名高きシステムとなってしまったのだが、今回はそんなことについて書かせてもらおうと思う。
では、そのワナとは何かを最初に紹介しよう。
■ワナ
まず、その長大さが挙げられるだろう。FC版１も復活の呪文方式だったのだが、２では記録する内容が増えたために最大で五十二文字と160％増になっている。当然、ミスする確率も増えるということだ。
次に、意味不明な文字列だという点も問題。“ぺひぎ えじぺ ぐざずも”などという謎の言葉を五十二文字も延々と綴るわけだから、そりゃもうミスるミスる。
また、使っているブラウン管テレビも重要。解像度が低いと、濁点と半濁点の見分けがつきにくいからだ。もしかしたら【゜】を【゛】にすれば復活できるんじゃないか、という淡い期待を抱いて、一文字一文字変更してみた結果が完全なる無駄だった、という遠い日の思い出。（目の錯覚なのか知らないが、たまに一つか二つ黄色や水色に見える文字があったり）
他にも、家にある鉛筆が全部ちびていたせいで、字が潰れて何が書いてあるのか分からなくなったりとか、そもそも書く字が汚くて次の日見たら謎の古文書になっているとか、呪文を書いていたチラシをお母さんが捨ててしまったとか、そんなワナもある。
もちろん、そういう悲劇を体験した後は、二度と起こらないよう注意するようになるのだが、それでも間違えるときは間違える。だって人間だもの。おまけに子供だもの。
とまあ、こんな具合に復活の呪文は、多くの子供たちの心を傷つけたトラウマシステムという地位を今日確立するにいたったわけだ。しかしながら、個人的には少々擁護したい気持ちになることがある。だって、FC版３に比べれば256倍マシだからだ。
■上には上がある
いってみれば、復活の呪文をミスっても“たかだが一日分の成果”を失うに過ぎない。よーし、今日はゾーマ倒しに行くぞー！ と意気込んで電源を入れたら、
ぼうけんのしょをつくる
の文字だけがテレビ画面に映し出されているあの絶望感に比べれば、そんなの何でもないじゃないか。また、一度に遊べる人数が無制限というのもポイント。バッテリーバックアップだと最大で三人しか遊べずケンカになったが、復活の呪文ならその心配もない。
それに、上では冗談でワナとか書いたけど、開発スタッフさんにそのつもりはあるはずもなく、むしろ快適に遊べるようにという配慮が見て取れる。それは『Love Song 探して』の存在だ。ドラクエ屈指のあの名曲が流れてくれるおかげで、呪文の入力自体は、さして苦痛ではなかった。中には、あの曲含めてトラウマになっている人もいるみたいだが……。
というわけで、確かにショックだけれど騒ぐほどでもないのでは、という話。
■おわりに
そんな復活の呪文だけど、時代は変わるもので、今では手で書き写さなくてもデジカメなんかで即記録できるようになった。おかげでミスもなくなったが、なんか悲しい気がするのも事実。いや、単に思い出が美化されているだけか。
何はともあれ、あれを経験してるが故に今のありがたみが分かるってもんですよ。最新作は、な・ぜ・か冒険の書が一つしかなくて吃驚したけど。
それはそうと、復活の呪文って、【゛】や【゜】が付いた文字の出現率がやけに高くなかっただろうか？ あいつら名前を決めるときには使えねえクセして、おかしな所でのさばりやがって、いったいどういうつもりなんだろう。もしかして、ホントにワナ！？