■サラン
サランの町と聞いて連想されることは何でしょうか。城下的宿場町、武器防具連盟、詩人マローニ、町の裏の謎の立て札など色々あると思いますが、町に流れるBGMもその一つでしょう。
■エレジー
『エレジー』とは、アッテムトや山奥の村、あるいは全滅したときに流れるBGMです。そして、第五章で夜のサランを訪れた際、マローニに話しかけると流れてくる曲でもあります。
エレジーは4の音楽の中でも印象的なものだと思われますが、中でもサランのエレジーは少々特殊です。
*「しんでしまった
サントハイムの ひとたちの ために
レクイエムを ささげましょう。
マローニがこう言ったあと町のBGMがエレジーに変化するわけですが、これは言うまでもなく彼の歌うレクイエムとして流れているということです。つまり、このエレジーは実際に4の世界の中で流れていて、教会のシスターや町をうろついている犬、そして勇者をはじめとする導かれし者たちが耳にしている歌ということになります。
本来BGMはあくまでBGMであって、ゲームの中の世界で流れているものではありません。しかし、サランのエレジーは違います。彼らもこの曲を聴いているのかと考えた時、普段よりドラクエの世界や人々を近くに感じないでしょうか。
■呪い
第五章のサランの町には、もう一人BGMの変化を伴った歌を歌ってくれる人物が存在します。昼は教会にいて、夜は宿屋に泊まっている大柄な男(リメイク版ではあらくれ)です。
彼の歌の曲名は『呪い』。マローニ同様、夜に話しかけるとBGMが(一瞬だけ)変化します。ドラクエ界の音痴は大抵この曲を歌うわけですが、古いユーザーの生命活動を束の間停止させるであろうこの演出は、はっきり言って洒落になってません。
しかしながら、そんなトラウマソングもゲーム中の人物にとっては単なるヘタクソな歌にすぎないのかなと思うと、今度は逆に彼らとの乖離を感じる気もします。
■おわりに
サランの町のようなBGM変化は全ナンバリングタイトルを合わせても稀なものだと思いますが、よく分からない良さがあるというか、印象深い場合が多くはないでしょうか(2のペルポイとか、7のユバール関係の諸イベントとか)。ドラクエの世界を身近に感じたり遠くに感じたり、音楽の力はかくも強いものなのかと再確認もさせられます。
BGMであって、BGMでない。そんな“歌”が二曲も聞けるサランの町。是非今一度お越しください。