■十年
「第一章から第五章まで約十年の時間が経過している」という話を聞いたことがあります。
十年というのがとても具体的で、何かしらの根拠がなければ出てこない数字だと思います。しかし、たぶんゲーム中にはそういったテキストは登場しなかったと思いますし、公式ガイドブックにもそのような情報はおそらく書いていなかったはずです(見落としているだけという可能性は大いにありますが)。他の媒体に関しては知らないので何とも言えません。
このページでは、この十年という時間について考えてみようと思います。
■十年の妥当性
そもそも十年という時間は妥当なのでしょうか。最も簡単に確かめる方法は、第一章と第五章のイムルの子供たちの台詞を見比べてみることでしょう。十年も経っていれば、そこには大きな変化が見られるはずです。
*「おじちゃん たすけて!
こいつら ぼくのこと
勇者だろうって いじめるんだ。
子供「わーい! わーい!
ぼく 家に帰れるんだね。
ママとパパに会えるんだね。
子供「おじちゃん どうしよう。
ぼく おしっこしたいよう。
ププル「ぼく ププル。
ププル「今 ぼくんちの宿屋に泊まると
へんな夢を 見られるよ!
すごいでしょ!
*「どうして ププルばかりに
面白いことが起きるんだろ?
いいなあ……。
*「今度は どこの洞くつを
探検しようかなあ……。
*「ププルと 相談しなくちゃ!
どうでしょうか。第一章も第五章も大して変わらないような気がするのですが。子供たちだけでなく、他のイムルの住人の台詞からも、それほどの時間の経過は窺えないように思います。完全に主観ではありますが、どうも僕には十年という数字が妥当と思えません。
■十年の導き方
では、十年という数字はどこから出てきたのでしょう。なにはともあれゲーム内の情報を元に想像した結果であるとすれば、おそらく第一章に登場するイムルの子供たちの年齢(推定)と第五章での勇者の年齢(十七歳)から導き出されたのだと思います。
第一章で起こったイムルの誘拐事件は魔物たちの仕業でしたが、その動機は次のようなものでした。
*「世界のどこかで 地獄の帝王が
復活しつつあるらしい。
*「しかし 魔物たちの予言では
帝王を滅ぼす 勇者も また
育ちつつあるらしいのだ。
*「そこで 勇者が まだチカラをつけぬ
子供のうちに 見つけ出し
闇にほうむりさる。
*「それが 魔物どものねらいだ。
ライアン! 子供たちをっ
子供たちを守ってくれ……!
攫われた当時の子供たちの年齢はハッキリしませんが、上で紹介した台詞を見ると幼い印象があります。たとえば彼らが七歳ほどだと言われても違和感はありません。要するに、
- 第一章で魔物たちは七歳ほどの子供を後の勇者かもしれないと考え攫っていた。
- 第五章で本物の勇者は十七歳である。
- 七歳と十七歳。その差は十歳。
- よって第一章と第五章の間は十年開いている。
と、おそらくこういうことなのではと思うわけです。仮にこういう考えにより十年という数字が導き出されたのだとすると、そこに存在するのは“イムルの子供たちと勇者は同年代である”という前提です。
しかし先に書いたとおり十年という数字は妥当と思えません。つまりイムルの子供たちは勇者と同年代でないということですが、そこから分かるのは“地獄の帝王と勇者に関する預言”では、勇者の具体的年代までは言及されていなかったということです。魔族たちは、後に勇者となる可能性のある“子供”を片っ端から闇に葬り去るという途方もないことをしていたのかもしれません。
■おわりに
結局のところ第一章から第五章まで何年の間隔があいているのかは分かりませんが、少なくとも十年ではないように思えます。僕としては、一年も経っていないと言われたほうが、むしろ得心できるくらいです。というか、十年前に戻りたいです。