■マローニ
【マローニ】はドラクエ4に登場する人物です。今回は、そのマローニのおはなしです。
■役割
まず、第二章でマローニが担う役割を中心に見ていこうと思います。
マローニと最初に会話できるのは、アリーナがサントハイムの城を抜け出した直後のことです。彼は城の隣にあるサランの町の教会にいて、自らを詩人だと紹介します。また、周りの人々の話から素晴らしい歌声の持ち主であることも分かります。しかし、この時点での彼は、ただそれだけの存在です。
マローニが自身の役割を果たすのは、サントハイムの王さまの声が出なくなる事件が起こった時です。治療の手がかりを求めたアリーナ・ブライ・クリフトの三人は、ゴンじいという人物からマローニがかつて喉を痛めたことがあると聞かされます。しかし現在は国一番の美しい歌声を持っているため何か知っているかもしれないという話になり、彼の元を訪ねるわけです。そして、マローニから次のようなことを教わります。
マローニ「そうです。マローニは私です。
マローニ「は? なぜ このように
美しい声をしているのかですって?
マローニ「それは さえずりの蜜という
エルフの薬を 飲んだためでしょう。
マローニ「その昔 旅をしている時
たまたま 砂漠のバザーの道具屋で
見つけたのでございます。ララララー。
この話を聞いた後アリーナたちは砂漠のバザーへ向かい、そこで得た情報を元に囀りの蜜を入手。王さまは声を取り戻します。
■人物像・その一
それでは、上記のことからマローニについて何が分かるでしょうか。
まず、現在はサランの町に身を寄せているマローニですが、かつて旅をしていたという話から、本来は吟遊詩人であったことが窺えます(公式ガイドブックでも、彼のことを吟遊詩人と紹介しています)。しかし第二章時点で彼を吟遊詩人と呼ぶ者は一人もおらず、本人も単に詩人と名乗っていることから、再び旅に出るつもりはないのかもしれません。
また、旅に出ていたことと喉を痛めたことの前後関係はどうなのでしょう。喉を痛めたから治療法を探すための旅に出たのか、はたまた旅の途中に喉を痛めてしまったのか。彼が吟遊詩人であったなら、後者のほうが自然でしょうか。いずれにしろ、砂漠のバザーで偶然にも囀りの蜜を入手できたマローニは強運の持ち主のようです。
しかし、彼に関して特筆すべき点はもっと別にあります。上で紹介したマローニの台詞を、もう一度御覧下さい。あまりにあっさりしている為そのままスルーしてしまいそうですが、彼はかなり重大なことを喋っています。自分の声が美しいのは囀りの蜜を飲んだためだ、と彼は言っているのです。結果、ブライとアリーナがマローニに対する次のような感想を漏らすことに。
ブライ「フム。この者の声は
エルフの薬のせいだったと。
まあ 多くは語るまいて。
アリーナ「この人 さえずりの蜜を
飲まなかったら もしかして
ヘタクソだったんじゃないの?
あるいは多くの人がブライやアリーナのような引っ掛かりを持ったかもしれません。失礼ながら僕も同じように思いました。美声であることが即歌の上手さに繋がるとは言いませんが、囀りの蜜を飲んだという事実がこのような疑惑を産んでしまうことは当然の帰結ではないでしょうか。そして、それこそ彼の人となりを見る上で最も重要な点である気がします。
■人物像・その二
上記のマローニの発言は、普通に考えてあり得ないことに思えます。何故なら彼は詩人であり、詩人にとって自分の歌声に悪評がつくことは最も避けたい事態であるはずだからです。彼の本当の歌声がどうなのか、その真偽は問題ではありません。囀りの蜜の秘密が漏れることで、そのような疑惑に晒されるであろうことが明白な点が問題なのです。
にも拘らず、自身の秘密を話すときのマローニからは、人にどう思われてしまうかとか、自分の名声がどうなるかとか、そういったことを気にする様子が微塵も感じられません。繰り返しますが、じつにあっさりと答えていることがその台詞から分かります。
無論アリーナたちの様子に只事でないものを感じ取ったのかもしれませんが、それでも普通は躊躇う場面に思えますし、その気さえあればテキトーな理由を言ってあしらうこともできたはずです。アリーナたちが声の秘密を知りたがっている理由を明確にしていない状態であれば、それは尚更のこと。
つまり、マローニにとって囀りの蜜を飲んだことは秘密でも何でもなく、隠すつもりなど毛頭なかったということです。その堂々とした佇まいからは、一種の悟りの境地に達しているか如き人物であることが伝わってこないでしょうか。僕なんかとは明らかに見ているものが違うし、人間としての器に天空と魔界ほどの隔たりが感じられます。
ただ、第五章でサントハイムの人々を既に死んだものと見なしてレクイエムを歌う辺り、ちょっと諦観しすぎだろうという気もしますが。
■おわりに
マローニ殿。本日あなたは、ドラクエ三大詩人の一人に選ばれることが決定致しました。一個人の脳内で。