■うらみごと
おいおい冗談はよしてくれよ！ いきなりパーティを抜けるって、いったい何を考えてるんだ？ そりゃあ、そんな流れになるのかな的雰囲気は、そこはかとなく感じていたけどさ。それにしても急すぎだろ！
お前なら分かってくれるよなだと？ 分かんねえよそんなの！ はっはっは、お前はそう言うと思ったよじゃねえんだよ！ お前はオレを何だと思ってんだよ！ ひとっつも面白くねえよ！
決められた人生じゃなく自分の道を行きたい？ いっぱしの伝説を背負う男になる？ この意味不明なアザがうらやましかった？ オレにとっちゃコンプレックスだよこんなの！
なんだかんだ言ってるけど、結局あの踊り子さんに惚れただけじゃないか！ お前のせいであのトゥーリストの人生台無しだぞ？ 可哀想だとは思わないのか？ アレ一生独り身で寂しい老後を送ることになるよ。そんでもって海の魔神とかと戦う羽目になったりさぁ。オレには分かるんだよ。
まぁ、どっちみちアザのせいであの二人は結婚できないんだけど。でもそんなことはどうだっていい。
そもそも、この旅だってお前が始めたんじゃないか。オレは半分以上それに付き合わされてきただけさ。だって「はい」と「いいえ」しか言えないし、どっち選んでも結果は同じで何が拒否できるってんだ。
思えば、昔からそうだったよ。オレの人生お前に振り回されっぱなしだよ。お前とつるんでたせいで、城下でのオレの評判が微妙に下降気味だったのもどうせ知らないんだろう。最近は持ち直してきたけどさ。
だいたい、この後どうなるか分かってるのか？ オレは王さまや姫さまにこのこと報告しないといけないんだぞ？ 毒舌女と狼少年は絶っ対ぜんぶオレに丸投げさ。損な役はいつもオレに回ってくるんだ。いつだってそうだよ。
王さまも姫さまも悲しむぞ？ 姫さまなんて精神を病んでおかしくなるぞ？ 町全体が封印された土地みたいに暗黒に覆われることになるんだぞ？ もはやオレだけじゃない、島ひとつがお前に振り回されてるよ。オレにはこの先に待っている地獄が手に取るように分かる。ホントにそれでいいのか！？
いや、この際はっきり言ってやる。意味は分からないだろうが、オレは二周目なんだよ。だから、もうお前の子孫とお前の埋まってる墓の前で語らいたくなんかないんだよ！ 海で石版ひきあげて、みんなの前で泣きたくないんだよ！ チクショウ……。