■キミに 決めラ!
ドラクエ7のパーティは最終的に四人で構成される。しかし仲間は五人で馬車もない。これが意味していることは何か。魔王オルゴ・デミーラとの最終決戦へ向かうにあたって、一人は家でお留守番という悲しい事実である。
これまで長い冒険を共にしてきた仲間なのだから、最後まで全員一緒にと思った人も多いかもしれない。が、それは叶わぬ願いだ。誰を留守番させるかの選択をプレイヤーは迫られることになる。
■検討
誰を外し、誰を連れてゆくべきか。といっても主人公は外せないので、選ぶのは他の四人からとなる。プレイヤーの選択は、即ち主人公の選択と言って良いだろう。
では、たかだか一個人の考えでしかないが、仲間一人ひとりの心情や置かれた状況などを踏まえつつ、それぞれ検討してみようと思う。
《メルビン》
まずメルビン。かつて行われた神と魔王の戦いで、神と共に戦った伝説の英雄だ。しかし、その戦闘の最中、神の手によりメルビンは石に封印されてしまう。未来に託す希望として。その後、神と魔王の戦いがどうなったのかは長い間定かでなかった。
ところが、時代が下ったある時、オルゴ・デミーラが生きていたことが判る。つまり、神はオルゴ・デミーラの手によって死んだ可能性が高いということ。神の仇を討つためにも、また、あのとき神を守って最後まで戦えなかった無念さを晴らしてもらうためにも、メルビンは連れて行かなくてはなるまい。彼が年老いたじいさんであることは、今までの十二分の活躍を考えれば外す理由にはならないだろう。
よって、メルビンは確定。残りは二枠となる。
《ガボ》
次にガボ。もともとは白いオオカミだったが、なんやかやあって人間の姿になった少年だ。彼の仲間のオオカミたちは、デス・アミーゴという魔物によって殺された。また、彼の母親も、デス・アミーゴを封印する戦いの中負った傷が原因で死んだ。
時は流れ、そのデス・アミーゴを封印から解き放った者がいる。それが、おそらくオルゴ・デミーラなのだ。ガボが主人公たちの旅に同行したそもそもの理由が、デス・アミーゴの封印を解いた強大な何者かを見つけ出し倒すことであった点を考えれば、彼も最終決戦に連れて行くべきではないだろうか。
しかし、神が復活し世界が平和になったと思われたとき(実際は神は復活していなかった)、ガボはこんなことを言っている。
ガボ「オイラ とっても
ここが 気に いっちゃったんだ。
ガボ「森の動物たちが いっぱい
あそんでくれるし おっちゃんも
とっても やさしいし。
ガボ「オイラ ずーっと
ここに いたいなあ……。
“ここ”とは木こりの家がある森のことで、“おっちゃん”とは木こりのことだ。ガボは、木こりや森の動物たちとの生活がとても気に入っている。木こりや森の動物たちも、ガボのことが気に入っているようだ。世界が平和にならない限りガボの望む生活は得られないし、魔王が復活したと知ったガボは戦う気満々でもあるのだが、上記のような姿を見た後だと、かつてない死地に彼を連れて行くことは少々躊躇われる。
よって、ガボは保留。
《マリベル》
三人目はマリベル。彼女は冒険の当初から主人公と共に旅をしており、父親であるアミットが心労により倒れてしまうまで、ずっと一緒だった。
他の仲間と比べた場合、魔王と戦わなければならない理由をマリベルは持っていないように思えるかもしれない。しかし、今まで長く大変な旅を続けることで世界を元の姿に戻していったのだという自負は、誰より持っていたのではないか。魔王に臆することなく主人公たちに同行する姿からは、自分の手で旅をやり遂げたいという想いが窺える気がする。
また、世間を斜に構えて見る傾向があるものの、そのじつ正義感もあり、世界に平和を取り戻すには自分の力が必要だと言い切れるだけの自信も持ち合わせている。大一番を目の前にしたときは流石に弱気な部分を見せてしまうかもしれないが、それも致命的なものではないはずだ。そして何より、前述のとおり一緒に始めた冒険。最後まで共に行きたいという気持ちがないと言えば嘘になる。
が、やはり気懸かりはマリベルの両親の存在だろう。口が達者なマリベルに言いくるめられ、主人公に同行することを許したアミットだが、本心では危険を冒して欲しくないに決まっている。母親のほうにしても、アミットほど表には出さないが、心配でないはずがない。二人の大切な娘を、魔王との戦いに連れて行っていいのだろうか。
さらに、主人公にとっても、幼馴染であるマリベルは特別な存在であるかもしれない。その場合、一緒に行きたいというよりは、連れて行きたくないと考える気もする。
よって、マリベルも保留。
《アイラ》
最後はアイラ。彼女は、神を復活させるため放浪を続けるユバール族の一員だ。世界の復活は神の復活により完遂すると考える主人公たちと、神を復活させることで自分たちの使命を全うしたいユバール族の想いが合致し、主人公たちの旅に同行することに。
主人公たちの助力により、ユバール族は神の復活を成し遂げたかに見えた。ところが、じっさいに復活したのは神でなく、魔王だったのだ。神は死んだ。そう結論が出た時点で、ユバールの旅は終わりを告げることとなる。
が、アイラの旅は終わったわけではない。ユバールは、神を復活させるために苦しい旅を続け、然るべきその時を迎えるために命を繋いできたと言っても過言でない一族。その連綿と続いてきた皆の夢を、オルゴ・デミーラは弄んだのだ。
自分たちは魔王の手の上で踊らされていただけと知った、アイラや他のユバール族の心境は如何様なものであったろう。絶望や失望と共に、魔王に対して許せない気持ちがあったはずだし、アイラ自身そのようなことを言っている。彼女の旅の目的は、オルゴ・デミーラを倒すことへと変わったわけだ。魔王と戦いたい。そう望むアイラを連れて行かない理由があるだろうか?
ある。それはリーサ姫の存在だ。兄であるキーファが二度と戻らないと知ったとき、リーサ姫がどれだけ悲嘆にくれたか。思い出すだけで辛くなるほどである。しかしアイラの登場により、ようやくリーサ姫は元気を取りもどした。キーファの血を引くアイラに、兄の面影を見たからだ。アイラをじつの姉のように慕うリーサ姫。アイラも、リーサ姫のことを気にかけている。
そんな状態で、姫のあの惨状を知る主人公がアイラを戦いに連れて行けるだろうか。相手は魔王。命を落とす事だって考えられる。仮に、アイラにそのような不幸が降りかかった場合、どのような事態になるか。たとえ世界を救うことができたとしても、エスタード島だけは暗黒に覆われているだろうことは火を見るより明らかだ。
よって、アイラも保留。
■結論
そんなわけで、正直メルビン以外は誰を連れて行けばいいのか判断に困る問題である。2や4、8のように端からメンバーが決められている作品や、5や6のように必ず仲間になるメンバーは全員連れてゆけるシステムだったなら、おそらく特に迷いもなく最終決戦へと向かっていただろう。しかし7は違った。
確実に仲間になり離脱もしないメンバーを、最後に必ず置いていくことになる唯一のナンバリングタイトルが7だ。この点に関して最初は否定的に思っていたけれど、今では敢えてそうしたのかもしれないと感じる。そういう状況に置かれることで、魔王と戦うということについて改めて考えさせられたように思うから。
が、結局どうすればいいのかは分からない。結論出ず。ガボは入りそうな気がするが、マリベルとアイラはどっちにすればいいのだろう。優柔不断はこれだから嫌だ。もういっそのこと、ラグレイでも連れて行ければいいのに。