■命の石
ちいさなメダルを集めるために、各地のダンジョンにある青い宝箱を漁っていたときの話。メダルは順調に収集できていたのだが、ひとつ問題があった。宝箱からたまに出現する、人食い箱やミミックだ。僕は二人パーティで冒険をしていたもんだから、奴らのザキと痛恨の一撃で、しょっちゅう教会送りにされていたのだ。
そんな危険極まりない人食い箱とミミックだが、こいつらからは目的のちいさなメダルを盗むことが可能。できることなら、盗んだ後に倒したいと思うのが人情というものだろう。
というわけで、痛恨は仕方ないにしてもザキは何とかならんもんかねえと袋の中を探っていると、3の時にお世話になったアレを発見した。その名も【命の石】。
命の石とは、ザキ系呪文を喰らったときに持ち主の命と引き換えに砕け散ってくれるという、ありがたいアイテムだ。2のときは、どうにもならんがな、という感じだった極悪呪文を防げるとあって、初登場時のインパクトは絶大そのもの。
そんな貴重な物が9では何故かその辺に転がっている。こりゃいいやということで、二人の持ち物いっぱいに命の石を持たせることに。これで万全だ。僕は意気揚々とちいさなメダル集めの旅に再出発したのだった。ところが。
*「!?
何が起きたのか分からなかった。ミミックが案の定ザキを唱えてきたので、バカめ! と思った途端に主人公が死んだのだ。呆然としている間に仲間も痛恨を喰らって仲良く教会へという見慣れたパターンに。
おかしい。別のアイテムを持たせたのかなと思い、持ち物を確認する。だが、僕のパーティは間違いなく命の石をポケットいっぱいに詰め込んでいた。
僕はやっと気づいた。9の命の石にはザキ系を防ぐ能力など無いという悲しい事実に。そして同時に思い知った。過去の設定を妄信してはならないということを。僕がミミックに対して、バカめ! と思っていたあの瞬間、ミミックのほうも僕に対して、バカめ! と思っていたに違いない。