■与作
エルシオン学院には個性的な十四人の教官がいる。それぞれ異なるスキルを専門としている、いわば武器(+盾と素手)のスペシャリストたちだ。僕は幸運にも十四人の教官すべての教えを享受することができたのだが、一人だけ大いなる謎を残された教官がいた。【ヨサック】先生である。
■ヨサック先生
ヨサック先生は、その名前から連想されるとおり【オノスキル】を専門とする教官だ。あるとき僕は、ヨサック先生から【オラのオノ】というクエストを依頼された。内容は、先生のオノをぶっさしたまま逃げていった紫色の木を倒し、そのオノを取ってくるというもの。難易度としては、それほどのものではない。僕は早速紫色の木を探し出し、倒しまくって先生のオノを手に入れることに成功した。
先生の元にオノを届けると、先生は報酬として【たつじんのオノ】(以下、達人のオノ)という武器をくださった。まだ見たことのない武器で、攻撃力も素晴らしく、とても嬉しかったのを覚えている。これで一人前のオノ使いに一歩近づいたかなと感慨に浸りながら、僕はその説明書きを読んだ。
植物系の敵に強い
きこりのたつじん
愛用のオノ
後から知ったのだが、達人のオノは、9に存在する数多の武器の中で“植物系にとても強い”という特殊能力を有した唯一の武器だった。
*「へー 植物系に有効なのか。
僕は何気なく討伐モンスターリストの植物系のページを見た。なんと、綺麗に埋まっているではないか。他の系統のページには、まだ見たことのない強敵が“?”で記されている。しかし、植物系にはそれがない。つまり、もう全てのモンスターと出会っているということだ。
どういうことだと思いながら、植物系で最も強いであろうリストの一番下に書かれたモンスター名を確認。【ウドラー】とある。僕は目を疑った。何故なら、それは先程までヨサック先生のオノをぶっさしたままうろついていた紫色の木だったからである。つまり僕は、ウドラーを倒すことによって、対ウドラー用の武器を手に入れたわけだ。
僕はもう一度、達人のオノの説明文を見た。
植物系の敵に強い
きこりのたつじん
愛用のオノ
え、今更この効果? という感想を、正直に言って禁じえなかった。
■植物系
なぜ植物系にだけ強いモンスターがいないのだろうか。他の系統には、もれなく高ランクモンスターやボスモンスターが複数存在しているのに、植物系には一種類たりとも用意されていない。不思議だ。
適当なモンスターがいなかったからかと言えば、そうではない。新しくデザインしなくとも、ドラクエには【ローズバトラー】という立派な植物系最強クラスのモンスターがいるからだ。その上位には【エビルプラント】も存在している。これらを出しておけば、何の問題もなかったはず。
■オノ系
下の表を見て欲しい。
武器名 | 攻撃力 | 特殊効果 |
てつのオノ | +30 | 植物系の魔物に有効。 |
はがねのオノ | +47 | 植物系の魔物に有効。 |
たまはがねのオノ | +68 | 植物系の魔物に有効。 |
きんのオノ | +26 | 植物系の魔物に有効。 |
バトルアックス | +52 | 植物系の魔物に有効。 |
ムーンアックス | +65 |
植物系の魔物に有効。 相手をたまに混乱させる。 |
フルムーンアックス | +82 |
植物系の魔物に有効。 相手をたまに混乱させる。 |
キングアックス | +78 | 植物系の魔物に有効。 |
カイザーアックス | +92 | 植物系の魔物に有効。 |
たつじんのオノ | +87 | 植物系の魔物にとても有効。 |
はしゃのオノ | +98 | 植物系の魔物に有効。 |
はおうのオノ | +115 | 植物系の魔物に有効。 |
ふぶきのオノ | +108 |
植物系の魔物に有効。 攻撃が氷属性になる。 |
ブリザードアックス | +126 |
植物系の魔物に有効。 攻撃が氷属性になる。 |
ふんさいのおおなた | +134 |
植物系の魔物に有効。 物質系の魔物に有効。 |
グレートアックス | +146 |
植物系の魔物に有効。 相手のテンションが1段階下がる。 |
ギガントアックス | +157 |
植物系の魔物に有効。 相手のテンションが1段階下がる。 |
グラビティアックス | +168 |
植物系の魔物に有効。 相手のテンションが1段階下がる。 |
ゴッドアックス | +178 |
植物系の魔物に有効。 相手のテンションが1段階下がる。 |
オノ系の武器は植物系に有効。達人のオノは植物系にとても有効。しかし、植物系最強はウドラー。オノ系の武器たちは、強ければ強いほど“植物系の魔物に有効。”というその特殊効果が虚しく映る気がするのだが、僕の錯覚だろうか。そんな特殊効果がなくとも、彼らが優秀な武器であることは重々承知しているけれど。
■おわりに
ヨサック先生。先生は、ウドラーを散々倒した僕に達人のオノを与えることで、いったい何を伝えたかったのでしょうか。未だ、その真意を図りかねております。奥義書までをも授かった身でございますが、僕はどうやらオノの達人と呼ばれるには程遠い存在なのかもしれません。