■おお! わたしの ともだち!(二)
おお! わたしの ともだち!(一)に戻る前回に引き続き、ドラクエ界の悪徳商人たちを紹介。
■ドラゴンクエスト4
《レイクナバの町》
世界にその名を轟かせている武器屋トルネコ。彼もまた悪徳商人の端くれだった。レイクナバの武器屋でトルネコがバイトしているときの話。やってきた客が、
*「○○を かおう。
××ゴールドで いいんだね?
と聞いてきたとき、いいえと答えて価格を一割つり上げることができるのだ。
*「だったら いらねえや。
と帰っていく客も当然いるが、
*「しかたがないから そのねだんで かおう。
どうも ありがとよ。
と買っていく客もいる。お礼まで言わせてヒドい話だが、そんな商売をしていても何故か客足のたえない謎の店でもある。特別なサービスでもやっているのだろうか?
《ボンモール北の村》
ボンモール北の村の道具屋は、村にある唯一の店なのだが、売っているのは薬草と鋼鉄の剣の二品だけと寂しい。
しかし、鋼鉄の剣の価格が明らかにおかしいことにすぐ気づくだろう。高いのではなく安すぎるのだ。その値段なんと10G。本来2000Gするものが何故なのか。薬草は定価(8G)で売られているのに。
それもそのはず、この村はキツネが見せている幻なのである。つまり売っている物も当然怪しいわけだ。試しに薬草を買ってみると、アイテム欄に増えているのはキツネの泥団子(?)こと馬の糞。鋼鉄の剣は檜の棒なのだ。
という具合に、この村ではリストと違う物を売りつけるという詐欺をしているのだ。ただ、彼のイタズラはかわいいものである。騙されても馬の糞を8G、檜の棒を10Gで買わされるだけだから、被害も殆どない。
それに両方とも本来非売品であるから、アイテムコンプリートを目指す冒険者にとってはありがたい話かも。価格にしても、馬の糞は定価の四倍の値段であるが、檜の棒は10Gで定価どおりだ。
《エンドール城下町》
トルネコもびっくりの悪徳商人が4には存在した。誰あろう奥さんのネネだ。エンドールで自分の店を持ったトルネコであるが、何故か販売はネネが行う毎日。店主であるはずのトルネコは、もっぱら商品の仕入れに追われる日々を過ごす。
しかしネネは凄い。品物を仕入れてきたトルネコに、
ネネ「○○ね。
これなら ××ゴールドいじょうで
うってみせるわ! それでいい?
と言ってくるのだが、その価格なんと定価の五割増以上。おまけに本当に売ってしまうから恐ろしい。トルネコの一割増なんて、もはや何でもないように思える。
中古品だろうが、近くの店で同じ品を定価で売っていようが、お構いなしに売りさばいてしまうネネの手腕を目の当たりにし、プライドをズタズタにされたトルネコは旅に出ることを決意するのだった(嘘)。
■ドラゴンクエスト7
やたらと滅ぼされかけた(あるいは滅ぼされた)運の悪い町ルーメン。ボルンガ率いる魔物に占拠されたとき、その店はある。なんと店主はモンスターのベビーゴイル。本来の店主を退けて商売をしているのだ。
*「キキーッ!
ミニミニショップへ ようこそ!
さあ 何を買ってくれるんだい?
キキーッ!と言いながらも人語を操り、対応も至って普通。売っている物は薬草、毒消し草、おなべのふたの三商品で、値段も通常。特に問題なさそうに思える。
しかし騙されてはいけない。4に登場したボンモール北の村と同様、買ってみたら馬の糞なのだ。それも全商品が。7の馬の糞は、4と違ってレアアイテムでも何でもない。買えはしないがそこかしこに転がっているし、ラッキーパネルの景品でも良く当たる。
なにがミニミニショップだ、この野郎。
■ドラゴンクエスト3
最後に紹介するのは、3のアッサラームで営業している武器と防具の店と、道具屋だ。彼らはこの文章のタイトルにもなっている、ドラクエ界の元祖悪徳商人である。
店を訪れた冒険者が話しかけると、
*「おお! わたしの ともだち!
おまちしておりました。
うっているものを みますか?
とか言ってくるので、
*「誰だよ お前。
と店を去ろうとすると、無理やり商品を見せられる。が、何故か価格が書かれておらず物凄く怪しい。どういうことだと何かアイテムを選んで値段を聞いてみると、案の定バカ高いゴールドを要求されるのだ。下記がその商品リストである。
品名 | 価格(G) |
てつのおの | 40000 |
おおばさみ(FC版のみ) | 59200 |
みかわしのふく(FC版のみ) | 46400 |
ターバン(FC版のみ) | 2560 |
てつかぶと | 16000 |
りりょくのつえ(FC版のみ) | 40000 |
まどうしのつえ(リメイク版のみ) | 24000 |
ホーリーランス(リメイク版のみ) | 36800 |
マジカルスカート(リメイク版のみ) | 24000 |
くろしょうぞく(リメイク版のみ) | 38400 |
品名 | 価格(G) |
やくそう | 128 |
どくけしそう | 160 |
せいすい | 320 |
キメラのつばさ | 400 |
まんげつそう(FC版のみ) | 480 |
まだらくもいと | 560 |
金のネックレス(リメイク版のみ) | 16000 |
そのボッタク率は脅威の1600%! 買うかこの野郎と店を出ようとすると、
*「おお おきゃくさん
かいものじょうず。
わたし まいってしまいます。
と言って、最初の提示価格の半額ならいいでしょう?と持ちかけてくる。当然それでも定価の八倍の価格であるから、買うわけがない。すると次は、
*「おお これいじょうまけると
わたし おおぞんします!
でも あなた ともだち!
と言いやがりながら、更に半額ならいいでしょう?と持ちかけてくる。どこまで下がるのかなと、こちらも更に渋ると、
*「おお あなた ひどいひと!
わたしに くびつれといいますか?
わかりました。
と白々しい台詞を吐きながら、三度半額に負けてくる。でも、まだ定価の二倍。いらない。と、ここで値下げも終了。奴らに定価で売る気は微塵もない。
しかし、これは一番安くても定価の二倍と知っているから高いと思うのであって、知らない場合もしかしたら買ってしまうかもしれない。なんたって最初の価格の八分の一にまで負けてくれるのだから。
この商人たちが使用している手口は現実にも用いられているもので、心理学か何かの専門用語でコントラスト効果と言うらしい。高価なものを見せられた後に、それより価格の低い品物を見せられると、それが決して安くないものでも安いと感じてしまうことがあるらしいのだ。高額商品の中にある2560Gのターバンが激安に見えてくるのも、その効果ということか。おお、怖い……。
因みにリメイク版でのみ売っている金のネックレスは、装備すると性格がむっつりスケベになる謎のアイテムで、この店でしか売っていない。つまり定価で買うことは不可能なのだ。
そういえば、この商人たちは何で片言なのだろう。3で片言というとスーの人たちを思い出すが、まさかこいつらの故郷って……。
*「わたしたち うそ つかない。
って言ってたのに。
■おわりに
冒険者の皆さん、悪徳商人にはくれぐれもご用心を。