■ローラ姫の足跡をたどれ!
前回は1の勇者だったので、今回は初代ドラゴンクエストのヒロインである【ローラ姫】をストーキングしてみようと思う。一部内容が重なっているので、ご了承いただきたい。
では、まずローラ姫の生まれから見てみよう。
■ローラ姫、生まれる
ローラ姫は、アレフガルド王家の王女として誕生した。家族構成については、リメイク版で登場する大臣が教えてくれる。下記はSFC版での彼の台詞だ。
*「ローラ姫は 王さまの
大切な ひとり娘じゃ。
*「王妃さまが 亡くなられてからは
ローラ姫が 王さまの心の支えに
なっておられたのだが…。
父親はアレフガルドの統治者であるラルス16世で、母親である王妃は既に此の世を去ったことが分かる。また、兄弟・姉妹もないようだ。そんなローラ姫だが、更なる不幸が彼女を襲うことになる。
■ローラ姫、攫われる
ローラ姫が住むラダトームの城に勇者が訪れたとき、彼女の姿は何処にもない。魔物どもに攫われてしまったからだ。いつ攫われたのかは、FC版では城の兵士が、リメイク版では大臣が教えてくれる。
*「ひめさまが まものたちに
さらわれて はんとしになる…
*「その姫さまが まものたちに
さらわれて 半年になる。
事件が起こったのは勇者が城を訪れる半年前だと分かる。それでは、どんな魔物たちが姫を攫っていったのだろうか。実は、これが長い間ハッキリしなかった。
しかし1999年。GBをプラットホームにリメイクされた1で、その謎は解消されることとなる。新しく追加されたオープニングで、その誘拐のシーンが描かれたのだ。正確には、死霊の騎士とドラキーたちが城壁を突き破り、姫の寝室に進入している場面だが、まさかFC版から13年の時を経た後に事実が明らかにされるとは、僕は思いもよらなかった。
ローラ姫の寝室が何処にあるのかと疑問を持たれるかもしれないが、彼女に限らずドラクエには何処で寝ているのか分からない王族の方々が大勢いるので、問題なしとしておこう。
さて。部下の魔物たちがローラ姫の寝室に押し入っていたそのとき、竜王のほうはというと、ドラゴンの姿で光の玉を奪い取っていたようだ。思いきり正体を晒しちゃってるものだから少々驚いてしまったが、別に隠すつもりはなかったということか。
そんなこんなで目的の物を手中にした一団は夜の空へと飛び去っていったわけだが、気になるのは、空を飛べない死霊の騎士たちがどうやって逃げたのか、という点。竜王とドラキーの飛ぶ姿を遠くに見ながら、そそくさと走って追いかけたのだとすると、何だか微笑ましい光景である気がしないでもない。
■ローラ姫、目撃される
ローラ姫が連れ去られゆく瞬間を目撃した男性がガライの町にいる。下記が彼の台詞だ。
*「ボ ボクは 見てしまいました!
*「ラダトームの姫を さらった
まものが 東の方へと
飛びさって行くのを…。
*「ああ 誰か 姫さまを 助けに
ゆくような ゆうかんな人は
いないものでしょうかっ!?
これが分からない。ローラ姫は、城のずっと東にある沼地の洞くつへ連れて行かれたはずだ。しかし、ガライの町は城から北西へ行った場所にある。つまり、ラダトームの城から見た場合、沼地の洞くつとガライの町は全くの逆方向なのだ。それなのに、何故ガライの住人が姫を連れた魔物を目撃しているのだろうか。
事件が起こったとき、この男性がラダトームの城か町にいた可能性もあるが、それなら、わざわざガライの町まで戻ってから偶さか通りがかったどこぞの青年(勇者)に話すより、直接ラダトームの城の誰かに伝えたほうがずっと手っ取り早いし確実だ。
しかし、上記の台詞の調子からは、まだ然るべき人に伝えることができていないという切迫した感じが受け取れる。やはり、この男性はガライでローラ姫を目撃した可能性が高いのではないか。であれば、竜王の一団は何故か一旦ガライのほうまで飛んでいき、踵を返して東へ飛んでいくという不可解な行動をとったことになる。いったい何故なのだろう。
竜王がまれに見る方向音痴で、ドラキーたちは上司が向かう方角が違うことに気づいてたんだけど何も言えなかったとか?
んなわけないか。
実は、上の台詞はSFC版の物で、FC版であれば話は違ってくる。下がその台詞だ。
*「わたしは きいた!
なんと ひめを さらったまものが
ひがしのほうに とびさったとか!
これなら、ガライの男性は直接の目撃者ではないようなので何の問題もないが、どちらが本当なのかは分からない。オリジナルのほうを採りたい気がする一方で、リメイクで間違えるというのも……。いずれにしろ、ローラ姫は空を飛んでいるところを目撃されていたようだ。
■ローラ姫、幽閉される
攫われたローラ姫は、沼地の洞くつに閉じ込められてしまう。しかし、洞くつといっても豪華な部屋で、リメイク版では床に赤い絨毯が敷かれ、テーブルと天蓋付きのベッドまで置かれている。カギつきの扉が取り付けられた上に、凶暴な番犬ならぬ番ドラゴンが睨みを利かせており、セキュリティも万全だ。竜王はローラ姫を自分の妃にするつもりだったらしいから、当然と言えば当然の待遇か。
とはいえ、やはりローラ姫は相当辛かったのだろうと思われる。FC版の彼女は、それはそれは顔色の悪い姿で閉じ込められていたからだ。あれはまさにゾンビ色。石壁の色と同化してしまうとは、どれだけ絶望に打ちひしがれていたのか想像だにできない。
■ローラ姫、救出される
そんな顔色の悪いローラ姫だが、突如現れた勇者に助け出されることとなる。絶望から一転、希望を得た彼女は勇者に一目ぼれ。そのせいなのかどうなのか、勇者に抱きかかえられた途端に顔色が抜群に良好となる。FC版第一作目にして、この細かな演出。素晴らしい。見たことのない方がいれば、何らかの方法で是非に確認していただきたい。
え? あれは仕様で偶然そうなっただけ? そんな、ご冗談を……。
まあ、それは置いておくとして、ローラ姫は救出されたあと、普通であれば直ぐにラダトームの城まで送り届けられる。しかし運悪く(?)普通でない勇者にぶち当たってしまうと、これが大変。旅に同行させられ、ついには竜王のところまで一緒に連れて行かれる可能性も。
また、竜王を倒すまで救出を先延ばしにされる可能性も考えられるし、最悪の場合、救出されずにエンディングを迎えるパターンもある。まるで、ローラ姫なんか最初から存在しなかったかのように……。救出されなかったら2に続かなくなってしまうから、エンディング後に救出に向かったと考えるしかない。
普通に救出された場合、ローラ姫は勇者に王女の愛というアイテムを手渡す。これがないと、初プレイ時は恐らくクリア不可能だろう。城から一歩ずつ距離を測った強者が、何処かに存在するかもしれないが……。
■ローラ姫、旅立つ
世界に平和が戻った後、ローラ姫は勇者の旅に同行させてくれるよう半ば強制的に頼む。そして、アレフガルドの周辺大陸へと旅立つ。また、後にローラの門と呼ばれる洞くつを通ったことも、下記の台詞から分かっている。
*「ここは ローラの門。
*「はるか昔 伝説の勇者ロトが
妻の ローラ姫をつれて
わたったことから
そう 名づけられたのじゃよ。
これはリメイク版2のローラの門でじいさんから聞ける話だ。
新たな大陸へ渡ったローラ姫は、勇者と共に新たな国を築いたとされる。勇者が国王になったのであれば、ローラ姫は姫でなく王妃になったということか。国の成立との順序関係は分からないが、いずれかのタイミングで子供も生まれ、幸せに暮らしたことだろう。
■おわりに
僕はローラ姫に対して、か弱いイメージを持っていたのだが、今回見返してみて、バイタリティ溢れるタフな女性であることが分かった。洞くつに半年以上も閉じ込められようが病気一つしていないし、想い人に対しても積極果敢だし、勇者のアテのない長旅にも進んで同行する。やはり、あの顔色の悪さは仕様によって引き起こされたものだったということか。
現在と比べ可能なことが限られていた時代の作品には、それ故に思わぬ奇跡が起こることがあるらしい。