■トルネコの足跡をたどれ!(二)
トルネコの足跡をたどれ!(一)に戻る引き続き、トルネコの足跡をたどろうと思います。
■続・トルネコの経路
《コナンベリー→大灯台》
船が完成間近というとき、事件が起きます。大灯台が突如魔物たちに襲われ、灯った邪悪な炎が付近を走行する船を沈め始めたのです。時期は勇者たちがコナンベリーに到着する数日前。このままでは船が完成しても出港できません。トルネコは単身大灯台に乗り込むことにします。
が、大灯台までやってきたは良いものの、出現する魔物が強く一階で立往生してしまいます。トルネコがそれまでに戦ってきた魔物を考えると、それも無理はありません。ワンランク上の実力を持つさまよう鎧や、四匹で現れて痛恨の一撃も繰り出してくるコドラあたりと一人で渡り合うのは大変です。特にさまよう鎧はホイミスライムを呼ぶので苦戦は必至だし、三階以上に現れる骸骨剣士のルカナンは鬱陶しい事この上なし。
あのままトルネコが先へ進んでいても、おそらく返り討ちに合っていたでしょう。実際はタイミングよくやってきた勇者一行に魔物退治を依頼することで何とか事なきを得ますが、その判断は賢明だったと言えます。ミネアの台詞にあるように、じつに強かです。
気になるのは、今まで色々とお金で解決してきたトルネコが、勇者一行に魔物退治を依頼するときにはその素振りも見せなかったこと。勇者が断っても何の対価も提示せず、
トルネコ「そう言わずに
そこをなんとか! お願いです!
と食い下がるだけで彼らしくありません。船の建造で文無しになっていたのか、はたまた勇者のお人よし気質を見抜いたのか、などと以前は思っていたのですが、リメイク版で気になる台詞が追加されていました。
《大灯台→コナンベリー》
勇者たちに魔物退治の依頼をした後、トルネコはコナンベリーに戻りますが、大灯台クリア前に町に戻って話しかけると次のように言ってきます。
トルネコ「やあ あなたでしたか。
今 海をながめていました。
トルネコ「ええ。
船はもうすぐ 完成するはずです。
あなたがたを信じて待っていますよ!
気になるのは、このトルネコの台詞を受けてのミネアとホフマンの台詞。
ミネア「船に乗せるのは
灯台の魔物を 退治するのと
交換条件ということでしょうか?
ミネア「さすが 商人。
人のよさそうなカオして
抜け目がありませんね。
ホフマン「他人を うまく動かすのも
商人としての才覚でしょうか?
よ〜し メモしておこう。
これはどういうことなのでしょう。なぜミネアがトルネコの言葉を“交換条件”と受け取ったのかが分からないし、ホフマンが感心している“他人をうまく動かす”というのも実際は無理矢理押し付けてきただけ。これだけだと不自然ではないでしょうか。つまり、彼らが上記のように感じるような遣り取りが、ゲーム中に描かれていないところであったのだろうと思うわけです。
想像するに、おそらく大灯台で勇者一行は船が必要だと漏らして、それを聞いたトルネコが、もうすぐ自分の船が完成するんだけどなー、大きな船だから四人くらい乗せるのは造作もないんだけどなー、個人所有だから行き先もある程度融通できるしなー、でも灯台がこれじゃあなー、みたいなことをさり気なく言ったのではないでしょうか。
■トルネコの加入
大灯台で船に乗せる乗せないの話があったとしても、それはあくまで匂わせる程度のもの。上のミネアの台詞や、次のトルネコ加入時の台詞に、そのことが窺えます。
トルネコ「よくやってくれました!
邪悪な炎も消えて ほら
海もあんなに おだやかです。
トルネコ「そして うれしいことに
わたしの船も完成しました!
トルネコ「そこで お願いがあるのですが
じつは わたしは魔物たちに
うらまれているようなのです。
トルネコ「でも あなたがたのような
強い人たちと一緒なら
とても 心強いでしょう。
トルネコ「わたしも仲間にしてください。
一緒に 世界中を
まわろうじゃありませんか!?
では、なぜトルネコは魔物を退治してくれたら船に乗せると明言しなかったのでしょう。それは、大灯台で出会ったとき既に勇者たちを用心棒候補として見ていたからなのかもしれません。ハッキリとした見返りなしに無理な願いを聞いてくれるかどうかで、彼らの人となりを見極めたのではないでしょうか。
そもそも、この時のトルネコが求めていたであろう用心棒は、ロレンスやスコットといった普通の用心棒と違ってかなり特殊です。まず、トルネコは文無しなので、お金目的の人ではダメです。また、世界中の武器を集めるというアテのない旅に同行してくれる人でなくてはなりません。更に、長くなると予想される旅ですからソリの会わない人では嫌でしょう。
つまりお金以外にトルネコ側に与えるものがあって、トルネコと同じようにアテのない旅をしていて、尚且つ性格の良い人物でなくてはならなかったのです。そんな都合のいい人は普通存在しませんが、なんかいました。
それにしても、あの一瞬で魔物退治の依頼と用心棒探しを同時にこなしていたのだとしたら、この男やはり只者ではありません。
■おわりに
こんな具合に互いの利害関係が一致し、勇者一行の仲間となったトルネコ。しかしそれは表面上の理由であり、実際は運命に導かれた結果と言えるでしょう。まさかこの後、魔界にまで連れて行かれる羽目になるとは、このときの彼は知る由もありません。