■結婚(フローラ)

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母親を助け出す旅の途中で、主人公はフローラの結婚相手に立候補することになる。本来なら恋愛だ結婚だにうつつを抜かすなど、誰が許しても主人公自身が許さなかっただろう。パパスの存在は彼にとって何より重いものであるはずだからだ。そんな主人公が何故立候補することになったのかだが、それにはもちろん理由がある。


■立候補した経緯

あの日サラボナを訪れた主人公は、町にいる旅の商人から次のような噂を聞く。

*「他の町でも有名な 大金持ち
  ルドマンさんが ひとり娘の
  結婚相手を 募集するそうですよ。
*「もちろん 条件は きびしいですが
  結婚が 決まったら
  家宝の盾も くれるとか。

家宝の盾。この言葉が主人公の頭にひっかかったに違いない。それはもしかして、自分が探している【天空の盾】なのでは、と。それを確かめるため、当然ながら主人公はルドマンの屋敷に行く。ところが屋敷を訪れてみると、ルドマンは結婚相手の立候補者にしか会わないと断られてしまう。しかし、盾のことを捨て置くわけにもいかないので、仕方がなく立候補者のフリをして屋敷に潜り込むしかなかったというわけだ。

■結婚の現実味

屋敷に潜り込んだ主人公は、他の立候補者と一緒にルドマンから話を聞く。しかし、【炎のリング】と【水のリング】の二つの指輪を手に入れたものがフローラと結婚できるということと、結婚相手には家宝の盾を与えるということしか聞かされない。結局、盾が何の盾なのかは分からず、ルドマンに詰め寄っても、こんなことを言われるだけ。

ルドマン「ん? なんだ
  まだ いたのか。
ルドマン「ウワサによると
  炎のリングは 南東の洞くつに
  眠っていると いうことだ。
ルドマン「2つのリングを
  手に入れなくては
  娘との結婚は 認めんぞ。

んなこと聞いてねえよ! という感じだ。立候補するつもりはなかっただろう主人公だから、このまま何も分からずじまいであれば、結婚することもなかったかもしれない。が、先の旅の商人から、

*「本当か どうかは
  知りませんが……。
*「ルドマンさんの家にある 盾は
  天空の盾とかいう すごい
  宝だという ウワサですよ。

という話を聞くことに。主人公の中で結婚という二文字が現実味を帯びてきたのは、おそらくこの時だと思う。母親を助けるためには天空の盾が必要であり、天空の盾を手に入れるにはフローラと結婚する必要があるからだ。

■フローラとの出会い

では、ここいらでフローラと主人公の出会いについて纏めてみよう。

SFC版ではサラボナの町で初めて顔を合わせた二人だが、PS2版ではビスタ港で子供時代に出会ったことになっている。それはフローラがルドマンに養子として引き取られて、まだ間もない頃のこと。そのとき不安な心持だったフローラは、自分と同じように父親と旅をしている小さな主人公を見て勇気づけられたらしい。また、主人公の持つ不思議な目が、ずっと心に残っていたとも後に述懐している。

《再会》

あるときサラボナを訪れた主人公は、前方から走ってきた犬(リリアン)を町の入り口で捕まえる。リリアンを追いかけて主人公の眼前に現れたのがフローラだ。彼女は、自分以外には気を許さないリリアンが主人公に懐いたことに驚く。そして、主人公の顔を見て暫し放心状態になるも、正気に戻って彼の名前を聞き、またお会いできたらお礼をしますといって去っていく。

フローラがボーッとしてしまった理由は、主人公の不思議な目のせいなのか、あるいは一目惚れのようなものだったのか、今一つ分からない。そして、主人公が、あのときの男の子だともハッキリ気づかなかったようだ。ただ、なんとなく彼に懐かしさを感じ、ずっと昔に何処かで会ったことがあるのかも、とは思ったらしい。

■お互いの気持ち

さて。再会の後、主人公は前述した過程により、フローラの結婚相手に立候補する。

その理由が家宝目当てというのは何だかイヤな展開だが、主人公が結婚に踏み切ったそもそもの動機が天空の盾の存在であったことは、おそらく疑いようがないと思う。フローラとは初対面も同然で、一目惚れしたとしても、いきなり結婚までは中々いかないのではないか。それが直ぐ結婚となったのは盾が必要だったからであり、やはり主人公にとっては、それだけパパスの遺言が大切なものだったということだろう。

しかしながら、主人公がフローラに対して全く好意を抱いていなかったとも言えないと思う。フローラはとても魅力的な女性であり、その言動からは彼女の優しさや芯の強さが窺える気がする。自分の結婚相手だと意識して見た場合、主人公がフローラに惹かれたとしても不思議はない。また、フローラにしても主人公に惹かれるものがあったことは確かだろう。町の入り口での様子もそうだし、彼女の言葉の端々にも、それが感じ取れなくもない。

つまり、二人は相思相愛だった可能性もあるわけだ。だが、次の台詞を見ると、恋心とは違った別の力(例えば、フローラに流れる天空の血)の影響も少なくないと思える。

フローラ「でも あなたと初めて会ったとき
  なにか ふしぎなチカラを感じて
  引きつけられてしまったのですわ。
フローラ「そう あなたが 連れている
  魔物さんたちのようにね。うふふ。

■アンディ

フローラを語る上で欠かすことができないのがアンディの存在。彼はフローラの幼馴染で、フローラのことを一途に愛している。その気持ちは本物で、彼女と結婚したいがために危険な死の火山に単身で乗り込むほどだ。やさしく人と競い合うことが苦手とフローラが語るその性格を考えても、アンディがどれほど本気だったかは分かるだろう。

また、フローラのほうもアンディに対しては特別な感情を抱いていることは間違いない。のちに結婚する可能性があることを考えてもそうだし、フローラ自身が幼馴染とはある意味大切な存在だと言っている。そして、フローラはアンディの気持ちを知っている。火傷を負って帰ってきた彼を付きっ切りで看病する姿を見ても、そこに恋愛感情があった可能性はゼロではないだろう。

のちにフローラはアンディのことを兄のように思っていたと言うが、それは主人公と結婚した後のこと。本心だったかどうかは分からない。

■主人公の葛藤

上で書いたとおり主人公とフローラが仮に相思相愛だったとしても、主人公に後ろめたい気持ちはあったことに変わりないと思う。自分にとっては切実な問題であってもフローラには関係がないし、本当ならそんな理由で結婚していいはずがないと、彼なら考えたのでは。ここに大きなジレンマがあっただろう。そして、フローラだけを純粋に愛しているアンディの存在も、それに拍車をかけたはずだ。

そこで僕が重要だと思う点は、フローラが主人公の真意を知っていたのかどうかだ。

■主人公の決意

思うに、フローラは全て承知していたのではないだろうか。ゲーム中にはハッキリと描かれていないが、罪悪感を抱えていた主人公は、おそらく己の胸のうちを正直にフローラに打ち明けたのだ。自分の使命と、それを達するために天空の盾が必要であること、盾を手に入れるためにフローラの夫に立候補したこと、結婚しても自分は旅を続けなければならず一緒にはいられないこと、それら全てを包み隠さず話したのだと思う。

何故そう思うのかというと、フローラの台詞に次のようなものがあるからだ。

フローラ「まあ ○○○○さん。
  私は 守ってもらうことしか
  できない女ですのよ。
フローラ「それでも 私を
  選んで下さるの?

フローラ「……そうですよね。
  ビアンカさんなら きっと あなたの
  ちからに なって下さいますわ。

これは、主人公の旅の目的を知っていたからこそ出た言葉ではないだろうか。私は守ってもらうことしかできないとは、つまり主人公の旅を手伝うことができないという意味で、ビアンカさんなら主人公の力になってくれるはずとは、つまり主人公の旅を助けてくれるはず、という意味なのだと思う。

タイミングとしては、おそらく炎のリングを入手した後。自らの事情を話した主人公は、それで断られたら仕方がないと思っていたかもしれない。しかし、フローラは全てを知って、それでも了承してくれたのだ。ここで初めて、主人公は結婚を決意したのだと思う。

■フローラの心中

主人公の告白を聞いて尚、フローラが彼を受け入れたのは何故か。彼に好意を持っており、且つその態度に誠実さを見たということもあるかもしれないが、長い間を修道院で過ごしていたことの影響も少なくないのではと思う。フローラが信仰心に厚い女性であることは、その言動に現れている。

つまり、自分の気持ちは二の次で、弱者(この場合は主人公)を助ける精神から結婚を了承した部分があったのではないだろうか。優しすぎるといってもいい。元々の性格に加え、修道院での生活は、彼女をそのように成長させたのかもしれない。

また、主人公とビアンカが結婚した場合、天空の盾は主人公のものにならず、母親を助ける旅を続けることもできない。つまり、上で書いた“ビアンカさんならきっとあなたの力になって下さいますわ”というフローラの言動と矛盾することになる。しかし、主人公がビアンカと結婚した場合でも、フローラは何らかの方法で主人公に盾を渡すつもりだったと考えれば、説明がつくのではないか。ここにも、フローラの慈愛の心が見て取れる。

■フローラと結婚

結婚前のフローラと主人公。お互い惹かれあうものはあったと思う。恋愛感情もあったかもしれない。だが、二人が結婚に至った過程を見ると、そこには別の要素も見て取れる気がする。それは使命感であったり、慈愛の精神であったり、謎の引力(天空の血?)であったり。そう感じるのは、やはり二人が出会って間もない関係だからか。

しかし、そんなことはあまり重要ではない。繰り返すことになるが、僕が最も大切だと思うのは、フローラが全てを知った上で主人公との結婚を受け入れたこと。そして、主人公もそんなフローラとの結婚を一度は決意したであろうことだ。結婚のそもそもの動機を考えれば、フローラと結婚することが自然な流れだとも言える。

フローラの態度に対して、自分も誠実でなければならない。そう主人公が思い、彼女と結婚することでそれを表すべきだと考えたなら、フローラと結婚すべきだろう。

結婚(ビアンカ)に続く。

UP:10/11/07
こんなのっぱら

―DRAGON QUEST FAN SITE―

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