■見えたり見えなかったり(一)

<A>
今回は対話形式で進めさせてもらおうと思う。

<B>
早速ですが、話の内容は何なのでしょうか?

<A>
ドラクエ6に、三つの世界が登場するだろう。そして各世界では主人公たちの姿が他の人に見えたり見えなかったりした。それについて整理してみよう。

<B>
何だか漠然としていますね。三つの世界とは、夢・現実・狭間の三つでいいのでしょうか。海底は入らない?

<A>
そう。海底は現実世界に含まれる。では、最初から順を追って見てみよう。


■基本的な関係

<A>
物語の冒頭で、主人公、ハッサン、ミレーユの三人がムドーに戦いを挑んだ。

<B>
あれは現実世界での話でしたね。ムドーの術によって、三人は心と身体を切り離されたと記憶しています。そして、主人公は夢世界のライフコッドで目を覚まします。

<A>
うむ。そのときの主人公は心だけの存在だ。心という言葉は、ゲーム内で夢や精神といった言葉でも表現されている。しかし、三つも同一の意味を表す言葉が混在しているとメダパニってしまうので、このページでは【夢】に統一させてもらおう。主人公は夢世界で目覚め、夢世界の住人に囲まれ、何の問題もなく生活していた。そのときの彼は夢世界の住人なのだから、夢世界で不自由なく暮らせるのは当然だ。

<B>
整理した割には、ややこしい気がするのですが。

<A>
うむ。僕もそう思う。しかし、これからもっとややこしくなる。

<B>
仕方がありませんね。先に進みましょう。さて、夢世界では問題のなかった主人公に問題が降りかかったのは、大地に空いた穴に落ちた後でした。

<A>
そう。穴の先にあったのは、現実世界。現実世界で暮らす現実世界の住人には、主人公の姿が見えなかったのだ。反対に、主人公には現実世界の人たちの姿は見えていた。つまり、現実世界での主人公は、一般的にいうところの透明人間だったわけだ。何故なら、このときの主人公は身体を持たない夢世界の住人だからだ。

<B>
やたらと繰り返しますね。

<A>
うむ。自分の説明に自信が持てないからこうなる。

<B>
よく分かります。

<A>
夢世界に戻ってきた主人公は、同じ夢世界の住人であるハッサンと出会う。色々あって、主人公はハッサンと共に再び現実世界へ赴くことになる。すると、どうだったかな?

<B>
ハッサンの姿も、現実世界の住人に認識することは不可能でした。ですが、主人公とハッサンは現実世界でも互いの姿を認識し合っていましたね。普通に会話していましたから。

<A>
うむ。それではここまでを表1として纏めてみよう。

<表1>
世界 認識する側→認識される側 結果
01 夢 『夢世界の住人』→『夢世界の住人』 ○
02 現実 『現実世界の住人』→『現実世界の住人』 ○
03 現実 『夢世界の住人』→『現実世界の住人』 ○
04 現実 『現実世界の住人』→『夢世界の住人』 ×
05 現実 『夢世界の住人』→『夢世界の住人』 ○
01.夢世界で夢世界の住人同士が互いの姿を認識できるのは当たり前だ。
02.現実世界で現実世界の住人同士が互いの姿を認識できるのも当たり前だ。
03.主人公とハッサンは、現実世界の住人の姿を認識できたから。
04.現実世界の住人は、主人公とハッサンの姿を認識できなかったから。
05.主人公とハッサンは、現実世界でも互いの姿を認識できたから。

■夢見のしずく

<A>
見える見えないの基本的な関係は、表1のようになるだろう。ところが、例外が発生する。誰にも姿を認めてもらえず困っていた主人公たちだったが、何故か二人の姿を見ることができる女性に出会ったのだ。

<B>
ミレーユですね。

<A>
そう。場所はサンマリーノの船着場にある待合室。ミレーユが待合室に入っていく姿を町の兵士が目撃していることから、彼女が主人公たちと同じ状態でなかったことは明白だろう。それにも拘らず、ミレーユには主人公たちの姿が見えた。そして、その理由が知りたければ自分に付いてこいと、ミレーユは言う。

<B>
主人公たちは、ミレーユにある館へと案内されるんですよね。そこにはグランマーズという夢占い師がいて、この世界で二人の姿を見えるようにするには【夢見のしずく】が必要だと聞かされます。それで、大した説明も無いままに夢見のしずくを採りにいくことに。

<A>
そう。なんやかんやで夢見のしずくを手に入れた主人公たちは、それをグランマーズのばあさんに手渡す。

<B>
そして、やはり大した説明も無いままに、グランマーズが夢見のしずくを主人公たちに振りかけると、二人の姿が透明ではなくなると。

<A>
そう。そして次のような会話が交わされる。

グランマーズ「そうじゃ
  このしずくを 少し
  お前さんにも 持たせてやろう。
グランマーズ「もし この先
  お前さんのような人を 見たら
  そのしずくを かけておやり。
グランマーズ「お前さんたちになら
  そういう人の姿が
  見えるはずじゃからな。
グランマーズ「のう ミレーユ。

ミレーユ「本当は 私も
  あなたたちのように この世界で
  姿が見えなかったの。
ミレーユ「それを おばあちゃんに
  助けてもらって この通り
  姿が 見えるようになったのよ。

ハッサン「なんだ そうだったのか!
  それで あんたには オレたちの
  姿が 見えたってわけだな。
ハッサン「でも ばあさんにも
  見えるのは なぜだい?

グランマーズ「なぜかって?
  ふーむ。 それは それはな……。
  きぎょうひみつ じゃよ。

<A>
で、この一連のイベントを、どう見る?

<B>
どうって、そのままでしょう。

<A>
確かに初めて冒険したときは、僕も何も思わなかった。ところが、一度クリアした後だと、どうも引っかかるのだ。一見成立しているように見える上記の会話だが、実は随分と齟齬があるのではないだろうか。

<B>
と、いいますと?

<A>
主人公とハッサンは、ばあさんとミレーユの会話をおそらく次のように理解したと思われる。

  1. 自分たちは、夢見のしずくの力で普通の人間に戻った。
  2. ミレーユも透明人間だったが、夢見のしずくの力で今の姿に戻った。
  3. ミレーユが透明な二人の姿を見ることができたのは、元透明人間だからだ。

<B>
そのままです。

<A>
ところがだ。二人の理解は随分と間違っている。第一に、主人公とハッサンは透明でなくなったとはいえ、夢のままだ。普通の人間には戻っていない。第二に、この時点のミレーユは主人公たちと同じではない。彼女は既に身体を取り戻していたと思われるからだ。

<B>
そう言えば、ゲーム中でミレーユが身体を取り戻す場面はありませんでしたね。

<A>
うむ。そして第三に、ミレーユが夢世界の住人である二人の姿を見ることができた理由は、じつはハッキリしない。

<B>
え? 彼女が元透明な人間、つまり元夢世界の住人だったからではないんですか?

<A>
上の会話の流れだと、そう考えるのが自然だとは思う。しかし、個人的にどうもすっきりしない。もし身体を取り戻すということが、一般的な現実世界の人間に戻ることを意味するなら、元に戻ったにも拘らず、夢世界の人間を認識する能力だけ残っているというのは、何だか都合よすぎじゃないか?

<B>
まぁ、ゲーム中でも身体を取り戻すことを元に戻ると表現してるので、そうかもしれません。

<A>
だから個人的には、

“身体を取り戻す=変な能力を伴うことなく元の状態に戻る”

と考えたいのだが。

<B>
ですが、そうなるとミレーユが主人公たちの姿を認識できた理由が他に必要になりますよ。

<A>
それは、夢見のしずくの効果だと考えれば、説明がつくと思う。夢見のしずくには、次の二つの効果があるのではないだろうか。

  1. 夢世界の住人に使った場合、その人は現実世界でも透明ではなくなる。
  2. 現実世界の住人に使った場合、その人は夢世界のものを認識できるようになる。

<B>
つまり、ミレーユが主人公たちの姿を認識できたのは、夢見のしずくの持つ二番目の効果のお陰ということにしたいと。

<A>
そのとおり。

<B>
変な効果を勝手に付け加えると、余計にややこしくなる気もしますが。

<A>
そのとおり。

<B>
それに、元夢世界の住人だから夢世界の住人を見ることができるのでは、という考えを切り捨てるのも良くないかと。

<A>
それじゃあ、取り敢えず次の表2のように纏めておくことにしよう。

<表2>
世界 認識する側→認識される側 結果
06 現実 『現実世界の住人』→『夢見のしずくを使った夢世界の住人』 ○
07 現実 A.『元夢世界の住人』→『夢世界の住人』 ○
B.『夢見のしずくを使った現実世界の住人』→『夢世界の住人』
06.現実世界の住人は、夢見のしずくを使った主人公たちの姿を認識できたから。
07.ミレーユは主人公たち姿を認識できたから。AとBどちらが理由かは不明。

<A>
さて。ここまでのことを踏まえて、主人公,ハッサン,ミレーユの三人が、夢世界の住人であるバーバラと出会ったときのことを思い出して欲しい。あのとき、主人公とハッサンがバーバラを認識できた理由と、ミレーユがバーバラを認識できた理由は異なると思われる。

<B>
主人公とハッサンの場合、表1(05)が理由ですよね。透明でなくなったとはいえ、二人が夢世界の住人であることに変わりありませんから。ミレーユの場合は、表2(07)のAかBいずれかの理由で、バーバラの姿を認識できたということになります。

<A>
そう。しかし、ずっと上で紹介したグランマーズ,ミレーユ,ハッサンの会話の流れだと、主人公とハッサンが夢世界の住人を見ることができる理由と、ミレーユが夢世界の住人を見ることができる理由は、同じだと言っているように聞こえないだろうか。

<B>
確かに。

<A>
このように、あの会話はプレイヤーに様々な誤解を与える可能性が高いのではないだろうか。ばあさんもミレーユも嘘は言っていないが、言葉が足らなさ過ぎるのだ。あの二人に比べて、主人公やハッサン、延いては初プレイのユーザーは何も知らないに等しい。そのため少しずつ齟齬が生まれる。そして、色々と世界の仕組みを知った頃には、ばあさんたちの会話のことなど綺麗すっかり忘れてしまっているわけだ。

<B>
そうは言っても、あの時点で詳しい設定を並べ立てられても、まるで理解できないでしょう。このページのように、無駄な混乱を招くだけですよ。

<A>
自分でも何を言っているのか分からくなってきた。

見えたり見えなかったり(二)に続く

UP:09/06/21
こんなのっぱら

―DRAGON QUEST FAN SITE―

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