■見えたり見えなかったり(二)
見えたり見えなかったり(一)に戻る■夢世界での現実世界の住人
<A>
新たに疑問がある。夢世界に行った現実世界の住人は、夢世界やそこの住人の姿を認識できるのだろうか。
<B>
可能なのでは? 後に仲間になるチャモロがその良い例でしょう。彼は、主人公などと違って奇怪な変遷を経ていない真っ当な現実世界の住人ですが、夢世界でも極普通に振舞っていますよ。つまり、現実世界の住人は現実世界に存在する夢世界の住人を認識できませんが、自分が夢世界に行った場合は夢を認識できるということでしょう。
<A>
いや。それが、そうとも言えないんだ。さきほど仮定した、夢見のしずくの第二の効果を思い出して欲しい。
<B>
えーと、
現実世界の住人に使った場合、その人は夢世界のものを認識できるようになる。
とかいう効果でしたか?
<A>
そう。もし、夢見のしずくに第二の効果があるのなら、チャモロの振る舞いは全く参考にならなくなる。彼が知らないところで使ったとも考えられるからだ。現に、夢見のしずくはバーバラに使った後もなくならない。もう使う場面はないにも拘らず。
<B>
やはり、その変な効果を加えようとするから余計ややこしくなるのでは。
<A>
そう。しかし、僕にとっては必要なのだ。というわけで、主人公たち以外の現実世界の住人を、夢世界で探して欲しいのだが。
<B>
そもそも、主人公たち以外の現実世界の住人が、夢世界に行くことは可能なんですか? 現実世界のレイドック王の、
レイドック「夢と現実 2つの世界を
行き来できる そなたたちなら
まやかしにも たえられるはずじゃ。
という台詞を見る限り、夢と現実の二つの世界を往来するというのは特別なことに思えるのですが。何で主人公たちだけ特別なのか聞かれると困りますが。
<A>
いや、少なくとも現実世界の住人が夢世界に行くことは可能だと思われる。現実世界の町トルッカで、ジミーとキャロルが噂をしていただろう。夢見る井戸にいったまま、帰ってこなくなった人がいると。あれは井戸に飛び込んで、夢世界に迷い込んだと考えるのが自然じゃないか。ドラクエ世界の噂は99.9%真実だから、信じてもいいだろう。
<B>
なるほど。生身のまま夢世界に迷い込むなんて、きっと夢見がちな人だったんでしょうね。
<A>
うむ。それで話は戻るが、夢世界に、主人公たち以外の現実世界の住人はいただろうか。
<B>
そもそも両方の世界に存在する人が限られていますから……。レイドックの宿屋に泊まっているゲバンは、いや、あれは夢のゲバンですね。他には……もしかしたらマサールとクリムトがそうかもしれませんよ。あの兄弟は夢世界にあるゼニス城で普通に振舞っていましたよね。そして、現実世界のポセイドン城を過去に訪れたことも分かっていますから。
<A>
なるほど。それに加えて、好奇心の塊のような性格である彼らが、ゼニス城で卵が生まれるときに立ち会っていなかったことも踏まえると、夢世界に留まることの叶わない現実世界の住人だった可能性が高いということか。
<B>
ですが、あまり確証はありませんね。
<A>
うーむ……いや、待てよ。やはりマサールとクリムトは現実世界の住人だ。以下の台詞を見て欲しい。
クリムト「大魔王め…… 兄上の心を
どこかに ふうじこめたな。
クリムト「兄の心は ここにない。
しかし 兄の心を 感じることは
できるようだ。
これは、眠ったように動かないマサールに対するクリムトの台詞だ。もし、マサールが夢世界の住人ならば、それは心そのものだということだろう。心そのものなのに、心はここにないとは合点がいかない。つまり、マサールは現実世界の住人だと考えていいのではないか。当然クリムトも。
<B>
なるほど。ということは、先の疑問は解決しましたね。
<A>
うむ。これで、夢世界に行った現実世界の住人が、夢世界やそこの住人の姿を認識できることが判った。それと同時に、夢世界の住人が、夢世界にきた現実世界の住人の姿を認識できることと、夢世界に行った現実世界の住人同士が、互いの姿を認識できることも判った。表3として纏めてみよう。
世界 | 認識する側→認識される側 | 結果 | |
08 | 夢 | 『夢世界の住人』→『現実世界の住人』 | ○ |
09 | 夢 | 『現実世界の住人』→『夢世界の住人』 | ○ |
10 | 夢 | 『現実世界の住人』→『現実世界の住人』 | ○ |
<B>
マサールとクリムトが現実世界の住人であることが判明したのはいいのですが、ますます夢見のしずくの第二の効果の必要性が問われることになりそうな気が。
<A>
さて、次に行こう。
■狭間の世界
<A>
いよいよ、大魔王デスタムーアが作り上げた狭間の世界でのケースを見ていこう。
<B>
狭間の世界には、様々な人が迷い込んだり、引きずり込まれたりしていましたよね。
<A>
そう。レイドックの兵士長ソルディやサンマリーノの町長などといった顔なじみや、ザクソンの防具職人エンデ、大賢者マサールとクリムトなどがいた。ソルディは夢世界の住人で、町長やエンデなどは現実世界の住人だから、狭間の世界では夢と現実の両方の人間が一緒に暮らしていることになる。そして、彼らは互いの姿を認識し合い、普通に接していた。
<B>
つまり、狭間の世界では夢とか現実とかを問うことなく、皆が普通に暮らしていたということですね。分かりやすくて何よりです。
<A>
うむ。元来デスタムーアは、夢と現実の両方の住人を狭間の世界に集めてワイワイやろうとしていたわけだから、不都合があっては困ったのだろう。それでは表4に纏めよう。
世界 | 認識する側→認識される側 | 結果 | |
11 | 挟間 | 『夢世界の住人』→『夢世界の住人』 | ○ |
12 | 挟間 | 『現実世界の住人』→『現実世界の住人』 | ○ |
13 | 挟間 | 『夢世界の住人』→『現実世界の住人』 | ○ |
14 | 挟間 | 『現実世界の住人』→『夢世界の住人』 | ○ |
■おわりに
<A>
思った以上に訳の分からない内容になってしまった。
<B>
疲れました。
<A>
では、最後に、表1〜表4までを纏めた表5を載せておく。
世界 | 認識する側→認識される側 | 結果 | |
01 | 夢 | 『夢世界の住人』→『夢世界の住人』 | ○ |
02 | 現実 | 『現実世界の住人』→『現実世界の住人』 | ○ |
03 | 現実 | 『夢世界の住人』→『現実世界の住人』 | ○ |
04 | 現実 | 『現実世界の住人』→『夢世界の住人』 | × |
05 | 現実 | 『夢世界の住人』→『夢世界の住人』 | ○ |
06 | 現実 | 『現実世界の住人』→『夢見のしずくを使った夢世界の住人』 | ○ |
07 | 現実 | A.『元夢世界の住人』→『夢世界の住人』 | ○ |
B.『夢見のしずくを使った現実世界の住人』→『夢世界の住人』 | |||
08 | 夢 | 『夢世界の住人』→『現実世界の住人』 | ○ |
09 | 夢 | 『現実世界の住人』→『夢世界の住人』 | ○ |
10 | 夢 | 『現実世界の住人』→『現実世界の住人』 | ○ |
11 | 挟間 | 『夢世界の住人』→『夢世界の住人』 | ○ |
12 | 挟間 | 『現実世界の住人』→『現実世界の住人』 | ○ |
13 | 挟間 | 『夢世界の住人』→『現実世界の住人』 | ○ |
14 | 挟間 | 『現実世界の住人』→『夢世界の住人』 | ○ |
<B>
ちょっと待ってくださいよ。ほぼ○じゃないですか。この苦労って意味あったんですか?
<A>
まあ、そういうこともあるさ。
<B>
…………それで、やはり07のBは残しておくんですか?
<A>
Aでなく、Bにしている辺りに謙虚さを表現したつもりだ。それに自己弁護するなら、夢見のしずくに第二の効果があると考えれば、
ハッサン「でも ばあさんにも
見えるのは なぜだい?
というハッサンの疑問にも説明がつく。
<B>
僕の知人は、
*「ばあさんは ばあさんだから
見ることが できたんだろう。
と言っていましたよ。
<A>
なるほど。そうかもしれない。