■カルベローナの長老(二)
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■バーバラ誕生とデスタムーア襲撃の時期
夢の世界にカルベローナが築かれたとき、ブボールが二百歳だったことは先に書いた。大魔王デスタムーアに滅ぼされてからほどなく夢の世界に町が築かれたのだとすると、バーバラの誕生とデスタムーアの襲撃は同時期だったことになる。しかし、どちらが先でどちらが後だったのかは分からない。
バーバラ誕生後に町が襲撃されたなら、彼女は零歳のときに実体(肉体)を死の炎で焼き尽くされたことになるだろう。一方、バーバラ誕生前に町が襲撃されたなら、バーバラは夢世界で誕生したことになる。この場合、彼女の実体は最初からなかったということだ。いずれにしろバーバラの実体は存在しないわけだけど、プレイヤーが受ける印象は、いくらか違ってくるようにも思える。
■カルベローナ封印の時期
カルベローナが封印された際、バーバラは記憶を失ってしまう。失う記憶があったということは、バーバラはある程度の年齢まで夢の世界のカルベローナで過ごしていたということだ。ただ、具体的にバーバラが何歳のときに町が封印されたのか、何年の間封印されていたのか、そのあたりはいまひとつ分からない。人々の話からも“昔”とか“長い封印”とか、そういう曖昧な台詞しか聞けないからだ。
しかし、デスタムーアが現実世界のカルベローナを焼き払ってから夢世界のカルベローナを封印するまでに、いくらか時間的間隔が存在したことは確かだろう。では、何故デスタムーアはすぐに夢世界の町を封印してしまわなかったのか。おそらく、その時はまだ夢世界に手を出せる段階になかったのだ。エンディングでゼニス王が言っているように、まず夢世界を実体化させないことには大魔王といえど直接的な力を行使できなかったのだろう。
ゼニス王「この世界を 支配するため
実体化させようとしていた大魔王の
チカラも もう つきてゆくはず。
■ブボールと時の砂
*「長老の あとつぎとなる
バーバラさまが 生まれ そして
成長するまでの 長い長い時間。
*「たましいのチカラが 弱まった長老を
おまもりするため 長老のまわりに
結界を はっていたのです。
町の重役っぽいおっさんの台詞だ。これと合わせて、前のページでも紹介した踊り子の台詞をもう一度見てほしい。
*「わたくしたちが たましいの存在と
なって 夢の世界へ この町を
きずいたとき 長老さまは200才。
中略
*「そこで 長老さまに なるべく
お休みいただけるよう トビラの前に
時の砂を まいたのです。
ブボールの部屋の前にまかれた時の砂は結界であり、結界を張ることで魂の力が弱まった長老に休んでもらうことができるようだ。時の砂の力が、部屋の中の時間の流れを外に比べ緩やかにするということだろうか。
では、なぜ時の砂をまいてまでブボールの寿命を延ばす必要があったのか。それは、バーバラの前に産まれたであろうCがいなくなってしまったからだ。本来であれば、ブボールが亡くなってもCが次の長老となり、マダンテを継承し、カルベローナの民を率い、次期長老であるバーバラの成長を見守っていくはずだっただろう。
しかし、Cはいなくなってしまった。そうなると、ブボールが亡くなれば必然的に長老不在の期間が生じてしまう。世界がまさに大魔王の手中に収められんとしている時代にあっては、できる限り避けたい事態だったはずだ。そのことはブボール死亡後に聞ける重役っぽいおっさんの台詞からも伝わってくる。
*「ど どうか このことは
町の者には 内密に…。
*「いつか バーバラさまが 修業を
終えて もどられるまで 皆を
不安にさせたくないのです。
*「バーバラさまが 長老となる
大魔女に なられるまで 町の者を
不安にさせたくありません。
*「砂のうつわは まだ うばわれたまま
ということに しておいてください。
*「皆の 心の問いかけには 私が
長老さまのフリをして
答えておきましょう。
そういった事情から、二百歳を越えたブボールが長老の役割を引き続き担わざるを得なかったのだ。おそらくは。
■おわりに
因みにDS版はやったことがないので、今回の文章はSFC版をもとにしている。また、バーバラが百歳でないと仮定して話を進めたけれど、本当はどうなのか分からない。夢世界の住人の見た目はあてにならないし、女神像から産まれてくるカルベローナの長老たちは一般人と違って百歳でもまだ若いのかもしれない。そもそもCなんて人物は存在しないのかもしれない。百歳の家出娘は、あるいは存在するのかもしれない……。