■勇者inロトシリーズ(二)
勇者inロトシリーズ(一)に戻る前回に引き続き、ロトシリーズ(1・2・3)における勇者とロトのおはなしです。
■ドラゴンクエスト2
今回は、1から100年後の2の世界。
《ロトの血を引く三人》
物語の主人公は、【ローレシアの王子】と【サマルトリアの王子】、そして【ムーンブルクの王女】の三人です。彼らは皆、伝説の勇者ロトの血をひいています。ここで言うロトとは、1の時代から伝説となっていたロトおよび1の主人公を指します。
さて。1の時代、勇者は二つのことを指していました。一つは世界に平和を取り戻そうと旅に出た勇気ある者たちのこと、もう一つは世界に平和を取り戻した者のことです。後者の方は真(まこと)の勇者とも呼ばれ、それはロトのことでもあります。
それを踏まえれば、世界を破滅させんとするハーゴンの討伐に旅立った王子たちは、勇者と呼んで差し支えない存在だと言えるでしょう。
《消えた普通の勇者》
ところが、王子たち以外の勇者に2の世界で会うことはありません(少なくともゲーム中では)。1の時代には何人もの勇者がいたらしいのに、2では見当たらないのです。いったい何故なのでしょう。
*「結局は ロトの血筋が 物をいう。
*「オレたちが 何をやろうと 全部ムダ!
といった諦めの風潮が、真の勇者を目指していた庶民の間に蔓延してしまっているのでしょうか。何故かって言ったら1の主人公が前例を作ってしまったからですが。
実際のところはどうなのか分かりませんが、その代わりに別の勇者が2には存在しています。デルコンダルにいる女性の台詞を見てください。
*「ここは たたかいの ひろば。
ゆうしゃたちの コロシアムで
ございますわ。
つまり、デルコンダルの王さまの道楽に付き合った人が勇者であると……。
《真の勇者たりえる資格》
では、これまた1のときの常識(?)を元に、王子たちに真の勇者たりえる資格があるのかを、真の勇者選定委員会に聞いてみましょう。結果は以下のとおりになります。
ローレシアの王子 | サマルトリアの王子 | ムーンブルクの王女 | |
ロトのつるぎ | ○ | △(※) | × |
ロトのよろい | ○ | × | × |
ロトのたて | ○ | × | × |
ロトのかぶと | ○ | × | × |
この結果をそのまま受け取れば、ローレシアの王子は資格十分で、ムーンブルクの王女に資格はなく、サマルトリアの王子は良く分からん、ということになります。しかし、本当にそうなのでしょうか。
《知られざる物語》
問題なのは、やっぱりサマルトリアの王子です。なんで中途半端にロトの剣だけ装備できるのでしょう。彼は中途半端さを極めようとでもしているのでしょうか?
いいえ、違います。このサマルトリアの王子の謎には、伝説の武具たちの間で起こった、知られざる真実が隠されているのです。実は2の時代、剣と防具の間で仲違いが生じていたのです。その主な原因は、次の二点に集約されるでしょう。
- 何故か剣だけ弱い。大金槌と同レベル。
- じつは剣だけ二代目。初代は大魔王にぶっ壊された。
その争いの火種自体は、ロトが大魔王と戦った時代から既にくすぶっていました。同じ伝説の装備とは言え、やはり防具よりも武器のほうが目立ってしまうもの。
防具「あのやろう。
新入りのくせに しゃしゃり出やがって。
いい気になってんじゃねえぞ!
という感じで防具たちは剣のことを見ていたのです。剣のほうにしても、先輩の目が気になって、居心地の悪さを感じながらロトに振り回される日々。しかし転機が訪れます。共に大魔王を倒したことで彼らの中に仲間意識的な何かが芽生え、そういった悪感情は一旦うやむやになったのです。武具の間にも平和が訪れた瞬間でした。
ところが、2の時代。神の気まぐれによって極端に地位を下げられた剣が不満を持ち始めたことで、再び不穏な空気が漂いだしたのです。やさぐれた剣は、
剣「なんでオレだけ こんな扱い?
盾と兜なんて 竜王のとき働いてないじゃん。
剣「そもそも兜って いつから存在してるの?
大魔王と戦ったとき いたっけ?
といった文句をタラタラと垂れ流しました。昔は新入りということで遠慮がちだったかもしれませんが、500年も生きていればもう関係ありません。そこで防具たちが大人の対応をしてあげればよかったのですが、過去の遺恨や、まるっきり立場が逆転したこともあって、
兜「剣よ 無様だな。
500年来の ツケが
まわってきたということだ。
盾「まったく いい気味だ。
ところで兜。
大魔王と戦ったとき いたっけ?
と剣を嘲笑してしまったのです。鎧はというと、二度の大きな戦いを共に経験していたので、剣のことを全く嫌ってはいなかったのですが、両者にどちら側につくのかを迫られた結果、昔からの付き合いということもあって防具側の陣営に。同じ伝説の装備とは言え、やはり武器と防具には相容れないものがあったのでしょう。
とまぁ、そんなこんなで両者は決別し、その結果としてサマルトリアの王子はあんな中途半端な感じになってしまったのでした。はい。言うまでもなく全部ウソです、ごめんなさい。
《ロトの武具とロトの血》
話を戻しますと、サマルトリアの王子も、ムーンブルクの王女も、実は全てのロトの武具を装備できるのかもしれません。何故なら、FC版公式ガイドブックでロトの兜が次のように説明されているからです。
伝説の勇者ロトが使ったという最強の兜。ロトの血を引く者だけが身につけられる。
つまり兜に関して言えば、サマルトリアの王子でも、ムーンブルクの王女でも、あるいは彼らの親兄妹であっても装備可能ということです。であれば、他の武具もロトの血をひくものであれば身につけられるのではないでしょうか。前回は、真の勇者たりえる資格というのが何なのか分からないと書きましたが、やはり血のことなのかもしれません。装備できるのにしないのは、趣味に合わないとか、動きづらくてやってらんねえとか、そんな理由です。
《胡散臭い三段論法》
というわけで、前回の三段論法もどきが正しいとすると、
- ロトの血をひく者=ロトの武具を装備できる者
- ロトの武具を装備できる者=世界に平和を取り戻せる可能性のある者
- 世界に平和を取り戻せる可能性のある者=ロトの血をひく者
ということになります。つまり、ロトの血をひいてさえいれば、誰でも世界に平和を取り戻せる可能性があり、誰もが真の勇者たりえる資格を持っていると。うーん、なんだか腑に落ちませんね。さすがにこれは額面どおり受け取らない方がよいかもしれません。
《まとめ》
なにはともあれ、世界に平和を取り戻した三人は真の勇者になったようです。どっかの兵士が言ってましたから。つまり、同じ世界なだけあって1のときと変わってないということでしょうか。
★追記(10/07/10)
竜王五代さんからいただいたコメントにより、勇者の泉のこと書いてないじゃん! と気づいたので、追記として触れさせてもらいます。勇者の泉の説明としては、勇者の泉の洞窟に住んでいる二人の台詞を見ていただくのが早いかなと思います。
*「たたかいに たびだつものは
ゆうしゃのいずみを たずねるのが
ローレシアの ならわしなのだ。
*「このみずで からだをきよめ
たびのぶじを いのって
しんぜよう。
*「ロトのまもりよ
ゆうしゃと ともに あれ!
これを読む限り、やはり2の世界でも“平和を取り戻そうと旅に出た者たちのこと”を勇者と呼んでいるようですね。少なくともローレシア大陸(※)では。
※ローレシアやサマルトリアがある大陸のこと。