■勇者inロトシリーズ(三)
勇者inロトシリーズ(二)に戻る前回に引き続き、ロトシリーズ(1・2・3)における勇者とロトのおはなしです。
■ドラゴンクエスト3(一)
今回は、1の約400年前の時代である3。3には二つの世界があります。1や2にも登場したアレフガルドと、その上にある世界(以下、上の世界)です。3の物語は上の世界から始まるので、このページでは上の世界の勇者事情を見て、アレフガルドの勇者事情は次回に持ち越そうと思います。
《勇者と呼ばれる者》
まず、FC版3の公式ガイドブックにある、次の文章を御覧ください。
その朝、16才の誕生日を迎えた若者は、初めての登城に胸を躍らせていた。
〜中略〜少年の父、オルテガは、アリアハンにその人ありと言われた勇者だった。しかし彼は、魔物たちとの戦いの末、異境の地で火山の火口に落ち、帰らぬ人となった。
〜中略〜
今、若者に、かの勇者の再来を見たこの国の王は言った。
「オルテガが戦いを挑みし敵は、魔王バラモス。人々は気づかぬが、このままでは世界は魔王に滅ぼされてしまうだろう」
若者、いや、これよりの勇者は、戦いの仲間たちとともに、この世に平和をとり戻す冒険の旅へ、今旅立ったのだった。
文中で、若者あるいは少年(※)と呼ばれているのが3の主人公です。上の文章から、3の主人公と、その父【オルテガ】は勇者と呼ばれていることが分かります。彼らは何故勇者と呼ばれるのでしょうか。
※少女も含めた少年。《勇者と職業》
1や2になくて、3にあるのが職業という概念。公式ガイドブックでは勇者は職業の一つとして紹介されています。また、ゲーム中でも主人公の職業欄にある文字は勇者です。これを見る限り、勇者とは単なる職業名なのだと捉えることもできるでしょう。
ただ個人的には、勇者とは職業名というよりも、主人公自身を指す意味合いが強い言葉なのだと思っています。もし本当に職業ならば、他の人が転職できてもいい気がするのですが、実際は不可能。それは、勇者が修行等では得ることができない力を持つがゆえの存在だからでしょう。
その力とは、言うまでもなく、ライデインやギガデインなどデイン系の呪文を使用できる能力。つまり、雷を操れる、あるいは操る素質があると思われる(※)ことが、オルテガや主人公を勇者たらしめているのです(たぶん)。特に、主人公が何もしないうちから勇者と呼ばれるのは、そのためだと思われます。
※最初は使えないから。《雷と血》
オルテガとその子供である主人公だけがデイン系呪文を修得できることから、二人が雷を操れるのはおそらく血筋によるものと思われます。3の主人公は、かなり特殊な家系の生まれなのでしょう。しかしながら、なぜ雷を操る者を勇者と呼ぶのかは謎。オルテガの何代か前の先祖にまつわる伝説・逸話のようなものあって、それに由来しているのかもしれませんが、残念ながら僕は知りません。
《勇者という認識》
また、そういった勇者という存在に関しての理解が、世界的に浸透しているのかは甚だ疑問です。旅をする過程で、主人公が棺桶の中に入っていたり、あるいはパーティから外れていても、主人公一行(つまり仲間)のことを“勇者”と呼ぶ人がいたり、顔を合わせた途端に面倒かつ個人的な用事を押し付けてきて、
*「それを片付けたら 勇者って認めてやんよ。
的な王さまがいたりと、主人公のことを特別視していない人と出会うことが少なくないからです。某国の王さまなんぞは、
*「こしょうをもちかえったとき
そなたらを ゆうしゃとみとめ
ふねを あたえよう!
とか言ってきて、胡椒を持ってくれば誰でも勇者だぞよ、という人物。訳が判りません。こんな具合に、勇者という存在が特殊だと認識しているのは、ごく一部の人間だけなのかもしれません。例えば、アリアハン大陸の人たちとか。
《オルテガ》
ただし、オルテガの場合は違います。オルテガはアリアハンに限らず世界のあちこちで勇者と呼ばれているからです。では、なぜ彼は多くの人々に勇者と認識されるようになったのでしょう。
思うに、オルテガはバラモス討伐の旅の途中で、様々な事件や困難を抱えた人々に遭遇したのではないでしょうか。人のいいオルテガが、それらを無視したとは思えません。なにかと力を貸したことだと思います。そんな旅を続けているうちに、アリアハンからやってきたオルテガというおっさんがなんか凄えみたいな噂が方々に広がっていき、主人公が成長したときには、世界に名を轟かせる勇者になっていたと。まぁ、全然違うかもしれませんが。
《勇者と転職》
さきほど、勇者という存在が特殊だと認識しているのは、ごく一部の人間だけなのかも、と書きましたが、そのごく一部に確実に含まれる人物がいます。それは、ダーマ神殿で転職を司っている神官です。あのおっさんは、勇者が転職したいと言うと、
*「おろかものめ!
ゆうしゃを やめたいというか?
それだけは ならんっ!
というように怒ってくるので、明らかに勇者を特別視しています。しかし、なぜダーマのおっさんは、あんなに怒るのでしょう。もし、上で書いたような生まれ持つ力ゆえに主人公が勇者と呼ばれているのなら、他の職業に就こうが就くまいが、まったく関係ないのでは。
あるいは、勇者というのが戦士や魔法使いと同じ“職業名”なのだとしても、あんなに怒ってくる意味は分かりません。一旦別の職業に転職したとしても、再び勇者に転職し直せば良いだけの話ですから。勇者といえども完全無欠ではないので、別の職業に就き、あらたな力を得ておきたいと考えても別にいいのではないでしょうか。
これは完全に想像なのですが、転職をしてしまうと、勇者の力が失われて二度と戻ってこないのかもしれません。ドラクエの転職は、わざわざダーマ神殿に行って、あのオッサンを介さないとできないことから、何やら特殊な儀式が伴う行為だという雰囲気があります。その儀式が、何故か勇者の力を消してしまうために、主人公は転職できないとか。繰り返しますが、想像なので根拠は皆無です。
《もう一人の勇者》
他、上の世界で勇者と呼ばれている人物に【サイモン】がいます。ボストロールにより祠の牢獄へ追放され、そこで命尽きることとなった彼ですが、何で勇者と呼ばれているのかは謎。ゲーム中で詳細が語られることはありません(僕の知る限り)。
《まとめ》
では、3の上の世界で、人々が何で勇者と呼ばれるのかをまとめてみます。ただし、想像込みなので、鵜呑みにはしないでください。
主人公が勇者と呼ばれる理由は、大きく分けて二つあります。一つは、雷を操るため。もう一つは、金の冠を取りもどしたり、黒胡椒を取ってきたり、あるいは魔王バラモスを討伐したりと、様々な武勲をあげたためです。前者は、おそらく何らかの伝説にまつわる呼称で、一部の人にしか認知されていない節があります。後者は、文字通り勇気ある者という意味での呼称です。
概ね主人公と同じだと思われますが、アリアハンでもやたらと勇敢だったと言われているので、バラモス討伐に旅立つ前から武勇伝のようなものが存在していたのかも知れません。それゆえに勇者と呼ばれている部分もあるいは……。
主人公と共に様々な問題を解決したことで、主人公の仲間も勇者と見なす人がいます。こちらも、文字通り勇気ある者という意味での呼称でしょう。
さっぱり分かりません。
★追記(10/12/05)
ルイーダの酒場の二階にいる詩人が、リメイク版ではこんなことを言っています。
*「勇者が 天に 選ばれしものなら
賢者は 神に 選ばれしもの。
勇者は天に選ばれし者。特別な存在であることを示している暗喩なのか、あるいは言葉そのままの意味で、その出自に天と関わる何かがあるのか。
後者であれば、そもそも天とは何なのでしょう。個人的には、“天に選ばれる”と“神に選ばれる”は殆ど同義のイメージがありますが、上の台詞では明確に区別されています。天と神の二つの存在があるということでしょうか。ルビスとの関係はどうなのでしょう。
いや、やっぱり暗喩ですかね。